幸せ

「…ふふ」

突然横で錫也が笑い始めた。
今は一緒に晩御飯作ってるだけで、笑う要素など1mmもないと思うのだけれど。

「どーしたの?」
「いやさ、幸せだと思って」

そう言ってまた錫也は笑った。
幸せって、今こうして料理作ってることのことだろうか。
まあ、いつも一緒に作ったりしないし、私は遊んでばっかだからかな?

「一緒に料理しないもんね」
「違うよ、そうじゃない」

じゃあ一体なんなんだ。
訳がわからないんだけど。

「一緒に生活して名前とずっと一緒にいられること、夫婦みたいにこうして共同作業出来ることが幸せだなあって」
「……」
「ふふ、照れてる?」
「照れてない!」

錫也の言葉で一気に頬に熱が集まるのがわかった。
多分、今の私の顔は真っ赤だろう。
真っ赤な顔を錫也に見られたくなくて、ぷいっと錫也とは反対の方向に顔を背けた。

「…可愛い」
「ひぎゃっ」

錫也に背後から抱き付かれ、耳元で囁かれて力が抜ける。
錫也に寄り掛かるようになってしまった。

「錫也っ…」
「名前、大好き」
「っ…」好き、その言葉が頭の中でぐるぐると回る。
私は、自分の気持ちを相手に伝えることがあまり得意ではない。
だから錫也が毎日のように言ってくれるが好きが、私は言えないのだ。

「……」
「…名前?」

でも、自分の気持ちは伝えなければ相手にはわからない。
口にしてちゃんと言わなきゃ駄目なんだ。
駄目な自分を変えたい。

「…わた、しも…」
「ん…?」
「錫也のこと…好き」

錫也は一瞬目を見開いてたが直ぐに微笑みを浮かべ、私に回していた腕の力を強めた。

錫也の手に私の手をかさね、ぎゅっと握り締めた。

「今日は積極的だね」
「…知らない」

恥ずかしくて俯いた。
だけど、錫也は私の前へと回り込み大きな手で私の頬を包み込み、顔を上に向かせられた。

「顔真っ赤だね」
「熱いからだもん」
「そうかな?俺は涼しいけどな」

まだ素直になれない私は、錫也に嘘をつく。
まあ、多分錫也は全てわかってるだろうからいいかな。
まだ甘えてたい。

「私はね、錫也が幸せなら幸せだよ」
「俺も名前が幸せなら幸せだよ」
「幸せ二倍だね!」
「そうだな」

そう言って、二人で暫く笑い合った。




「…なんか焦げくさい…?」
「あっ鍋かけっぱだった!」
「えっ夕飯が…!!」


Tittel by
20121003

back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -