だってさ、

「つ、ば…さく…」

俺の下で、辛そうに俺の名前を呼ぶ名前。
息苦しさからか、頬に涙が伝っていた。

「つば……ど、して…」
「どうして…?名前が、そう言ったんだ」





前、二人で遊園地に出掛けた時だ。
もう帰らなきゃいけない時間だったから、最後に観覧車に乗った。

「綺麗だね」
「うぬ…」

観覧車から見える景色は、とても綺麗だった。
夕日に染まっている海、山、街、全てが幻想的だった。

「まだ、帰りたくないな」
「俺もまだ、名前と一緒にいたい」

二人で笑い合って、ぎゅ、と手を握った。
名前の手はとても温かくて、俺の手と、ひどく冷たい心が温かくなる。

「…名前」
「なに?翼くん」
「もし俺が、一緒に死んでって言ったらどうする?」

名前は、俺が言ったことに吃驚したようで、目を見開いた。
でもすぐに、元の顔に戻る。

「…いや…?」
「…いいよ、翼くんとなら」
「本当に?」

本当に、って言って名前は笑った。
名前の笑顔が嬉しくて、俺も笑った―――




「言ったよな?」
「ぁ、れ……う、そ……じゃ…」
「嘘じゃない。俺は本気だった」

名前の首を絞める手、力を込めた。

名前を見てると辛いんだ。
名前が好きだから。
俺以外の奴と話すから。
だから名前を殺して俺も死ぬんだ。

「名前、名前名前…」
「つ、…く……す、…き…」

名前はゆっくりと目を閉じた。
まだ首から手は離さない。
絶対に名前を殺せるように。

「名前、好きだ。愛してる…」

返事がないのはわかってる。
だけど、きっと何処かで名前は俺の声を聞いてくれてるだろうから。

名前が気を失ってからしばらくたってから俺は手を離した。
頭の中で名前を殺してしまった悲しさと、名前がもう他の男を見ない嬉しさが混じりに混ざって気持ち悪くなり吐き気がする。

「名前、俺もすぐにいくから…」

名前を殺して気だるくなった身体に鞭を打ちキッチンへと向かう。
包丁立てにかけてあった包丁を握りしめ、首へと当てた。

「すぐに、会える。だから、また――」




また、愛し合おうね


Tittel by 自

20120826

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