貞操

「きゃああああああ梓くうううううん!!!!!ぶへっ」

目の前から走ってきた名前先輩の頭に、思い切りチョップした。

「…何の用ですか?名前先輩」
「そうやって冷たくあしらう梓くんも大好き!大丈夫、梓くんのためならMにだっべ…」
「……ぷ…」

名前先輩は本当にいいところで舌を噛む。
ついつい笑ってしまった。

名字名前先輩。
二年の宇宙科の先輩だ。
先輩と呼ぶ程の人ではないけれど、一応目上の人なので先輩をつけている。
名前先輩には僕が入学してからずっと追いかけられている。
毎日飽きもせず僕の元へとやって来るのだ。

「梓くん可愛いよ!ぱっつんが堪らなく似合ってる!」
「…それは、誉め言葉なんですよね?」
「もちろん!梓くん大好き舐めまわしたいぐらい」

忘れていたけど、この人は変態だった。
そんじょそこらの変態には負けないぐらいの変態である。

「……」
「梓くんって身体中柔らかそう…揉んでいい?」
「駄目ですよ」

僕へと伸ばしかけていた手をぱちん、と弾き落とす。
油断もすきもない。
男の身体を揉んだって楽しくなんかないのに。

「…あ、…」
「…なんですか?」

嫌な予感しかしない。
この人は変なところで、要らないことを思い出すから。

「梓くんって、胸大きい方が好き?」
「……はい?」
「やっぱそうだよね、男の人はみんな胸大きい人がいいんだよね…」

本当に要らないことを思い出してくれていた。
ここでそれを思い出すんだ。
それと、男に胸の大きさを聞くのは色々と間違っている。

「ねぇ、梓くん」
「…なんですか…」
「私、Cカップだけどいい?」
「名前先輩、もう少し声のボリュームを下げてもらえますか?」

回りの視線が痛い。
僕は何にも悪くないのに何でこんなめにあわなきゃいけないんだ。

「…はぁ…」
「やっぱり、Cカップじゃ嫌…?」

お願いだから、泣きそうな顔をしないでほしい。
これじゃあまるで、僕が悪者じゃないか。

「…別に、いいんじゃないんですか」
「!……」
「人其々なんですから」

いい加減面倒くさくなって、適当にあしらっとく。
僕は早く部活に行きたい。

「……」
「名前先輩、早く…」
「やっぱ梓くん大好き!!」

そう叫んで抱き付いてこようとする名前先輩を避けて、弓道場に向かって走り出した。

「あ、まってよ梓くん!」
「誰が待つか…!」




その後弓道場の前で名前先輩に捕まって酷いめにあった。
宮地先輩が助けてくれなかったら―――そう考えただけでも鳥肌がたった。


梓くんは追いかけられそうなぐらい可愛いです。
梓くんは生まれてくる性別を間違えたんだ、きっとそう。


Tittel by 自

20120829

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