同窓会

「錫也―」
「なに―?」

キッチンで私の朝食を作っている錫也に話し掛けると、語尾が伸びた返事が返ってきた。

「今日ね、外で食べるから夕食いらない」
「出掛けるのか?」
「うん。中学の同窓会があるの」

中学の同窓会は開くのが初めてで、卒業以来会っていない友達もいるから行きたくて今日はあけておいた。
錫也に言うの忘れてたから当日になっちゃったけど大丈夫だよね。

「わかった」
「ごめんね。一緒に食べれたらよかったんだけど」
「気にしなくていいよ。大丈夫だから」
「ん、ありがとう」

錫也は優しい。
物忘れは激しいし、家事もなんにもできない私とよく同棲なんてしてくれてる。
錫也とは高校からの付き合いで、もう五年たつだろうか。
高校の時から一緒にいてくれて、頭が上がらない。
私のお母さんみたい。
これは本人が怒るから絶対には言わないけど。




「錫也―行ってくるね」
「ちょっと待って」
「なんで―?」
「俺もいくから」
「ふ〜ん…………はあ!?」

同窓会が始まる時間に段々近付いており、そろそろ家を出ないと間に合わないから家を出ようとしたのだが、錫也が一緒にいくと行ってきた。
何故錫也が私の同窓会に一緒にいくのだろうか。

「なんで」
「なんでって、お前の彼氏だから」

私は溜め息を盛大に吐いた。
錫也が一緒に同窓会にいく必要はないのだけれど。

「私だけでいくって言ってあるし」
「一人ぐらい増えても大丈夫だろ?」
「…確かにそうですケド…」

決まりだな、って言って笑う錫也にまた駄目なんて言う勇気が私にはなかった。
取り敢えず幹事の人と友達にメールしておいた。
すると、友達から、え!?あんた彼氏いたっけ!?よくやったじゃん!絶対に連れてこいよ!というメールが届いた。
いや、連れてくって送ったメールに書いてあったからね。
っていうか、前彼氏いるって前話したような気がするんだけど…。
まあ同窓会楽しめればいいかなって、簡単に思っていた。




同窓会の会場につくと、凄かった、いろんな意味で。
友達が錫也を見てイケメンって言って、どこでひっ捕まえてきたとか、馴れ初めはとか、色々聞いてきてウザかった。
私に彼氏が出来ていたのは意外だって、中学の時のクラスメイトの殆んどが吃驚していた。
彼氏できなさそうに見えるのだろうか…。

「さあ飲め!あたしより先に彼氏つくりやがって!」
「それ完璧にひがみだから。まあ、飲むけどさ」

私はお酒が苦手だから、ジュースばかり飲んでる。
友達が酒を勧めてくるのを地味に避けながら。
隣にいる錫也は、終始にこやかに笑って女の子達に振り撒いていた。
ぐぬぬ、許せん。

「…錫也、大丈夫?」
「ん?何が?」
「…まあ、大丈夫だよね。女の子に笑み振り撒いてるぐらいだもんね」

ちょっと拗ねながら言うと、錫也が横でクスクス笑った。
笑わなくたっていいのに…。

「錫也のバカ…」
「だって、名前が可愛いんだもん」
「っ…」

錫也が私の方へ向いてにっこりと笑った。
不覚にも私はその笑みにときめいてしまった。

「ちょっと、お手洗い言ってくるな」
「うん、わかった」

スッと立ち上がって、お手洗いへと消えていった。
錫也は立ち上がり方も歩き方も綺麗なんだよなあ…女みたい。
その時、回りの女の子達が騒ぎ始めた。
女の子達の口から出てきたのはクラスで一番かっこよかった男の子の名前で、よく見ればその男の子がいた。

「よぉ、名字」
「久しぶり、直人くん」
直人くんはスーツを着ており、ネクタイを緩めながら私に近付いてきた。スーツ着てるってことは、多分仕事帰りなんだろう。

「隣、あいてる?」
「…ぁ、……」

私が錫也の席、っていう前に座られてしまった。
まあ、大丈夫だろ。
錫也、女の子に笑み振り撒いてたもん。

「仕事の帰りでしょ?」
「ん、まあな」
「お疲れ様」

私がそういうと、ありがとな、って言って笑った。
錫也みたいときめくわけじゃないけど、かっこいいなあ、って思ってしまう。




「…そんでさ、お前ころんだだろ?」
「な、なんでそんなこと覚えてるのさ…!」
「ははは、あれは傑作だった」

直人くんは私の失敗談をみんなに話始めた。
直人くんの口は、私にとって紡がれて欲しくないことばかりを紡いでいった。
同窓会で恥をかかせるとかやめて…!!

「忘れてくれたっていいのに…」
「忘れられるわけないよ」
「面白かったから?」

私がそう言うと、違うよって言って、体を私に向けた。
そして、直人くんの顔はいつになく真剣な顔だった。

「直人くん…?」
「俺さ、お前の事―――」

その後の言葉は、言われることはなかった。
理由は、直人くんが私の背後を見て固まったから。
その表情は、ライオンに捕食されるトムソンガゼルのようだった。
直人くんが硬直したのに加え、回りが静かになった。
なんだろうと思い、後ろに振り替えると――

「…錫、也…」

錫也大魔王様が、黒い微笑みを携えて立っていた。

「名前、こっちにおいで」
「えっ、いや、あの…」
「来る、よな…?」
「行きます行かせてください!!」

錫也大魔o……錫也が私を呼んでいたので錫也の元へと行った。
今この状況で錫也の元へいかないなんて選択肢は私になかった。

「…錫也、…」
「何?」
「ど、どしたの?」

錫也の笑顔があまりにも黒く怖くて、うが抜けてしまった。
同窓会のメンバー皆が、私達の方を向いていて凄い恥ずかしかった。

「…怒ってる?」
「そんなことないよ」

嘘だ。
絶対に嘘だ。
嘘じゃなかったらこんな黒い笑い方しないもの。

「…嘘、だよ」
「……えっ」

ちゅ、とかわいいリップ音と同時に唇に柔らかい感触と錫也のどアップの顔。

「……」
「はは、真っ赤だな」

そう言って錫也は私の頬をつんつんとつついた。
しーんと静まり返った同窓会の会場に、私の悲鳴が響き渡った。




「錫也の馬鹿!最低!ありえない!」「名前が告白されそうになるのが悪い」
「告白!?直人くんが私に告白するわけないでしょ!」

あの後会場にいるのがいたたまれなくなり家に戻った。
そして上の会話に戻る。
何故同窓会の会場で私はキスされなきゃいけなかったんだろう。

「も―やだ…あとでメールしておかなきゃ…」
「…誰に…?」
「友達にだよ!あんたのせいなんだから!はぁ…」

本当にありえない。
なんで私がこんな大変な思いをしなきゃいけないんだろうか。
あ、直人くんにもごめんなさいってメール送んなきゃだめか。
メアド知らんから友達に聞こうかなあ…。

「名前」
「なによ……っ!」

呼ばれて錫也の方に向いたら、またキスされた。
もう絶対に錫也は連れていかないと誓った日だった。



同窓会
「直人くん、だっけ…?」
「そうだけど、なんかあった?」
「直人くんによろしく言っといて」
「うん?」


ワケわかんなくなった/(^o^)\

20121014

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