Conversation sentence

死人に愛なし@錫也

好きだった。
いや、今でも好きだ。
彼女の笑った顔を、俺は今でも鮮明に思い出せる。
俺の最愛の彼女は、去年事故でこの世を去った。
人間の終わりなんて、あっさりしたものだ。
必死に騒がしく毎日生きているのに、死ぬ時は静かに、音も立てずに息を引き取るのだ。
彼女も、病院のベットで静かに息を引き取った。
俺は、彼女に死なないで、いなくならないでと言わなかった。
月子や哉太達は泣いて縋ったというのに、俺は遠目にそれをみていただけだ。
最初から、俺は諦めていた。
いや、俺は諦めしかないのだ。

「……」

彼女と過ごしていたこの部屋は、一人になった俺には大きすぎた。
もう少したら、この部屋は引き払うつもりだ。
好きだったのに、愛してたのに、彼女がいなくなった部屋でつぶやく。
なんにもしてないのに、酷く身体が重く、立っているのでさえ億劫だった。
彼女と二人で寝たベットに横になり、白い天井を見上げる。
昼間なのに閉じたカーテンの小さな隙間から入ってくる太陽光が顔にあたり、少し眩しかった。

「……俺は、どうしたらいい…?」

そんなことを言って、返事が返ってくる訳もなかった。
一人取り残された俺は、何をすればいいのか。
好きだった、ただ好きだった。
ぽつり、と彼女の名前を口から零した。
少し反響し、部屋にまた沈黙が訪れる。
今でも、愛してる。
そう呟いて、俺は気づいた。



もう俺は、彼女を愛せない。
涙が、頬を伝った。
彼女を亡くした時にさえ出なかった涙が、止まることなく俺の頬を滴り落ちた。


という中途半端を思いつきました。

Title by 自
Thu 07:16:38
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