あなたと同じ場所@梓
「弓道を始めようと思う」
私がそう梓に告げると、梓は少し目を見開いてからはあ、と溜め息を吐いて私にこう言った。
「…本当に?」
本当じゃなかったら梓に言ったりしないのに梓は私に聞くんだ。
「うん。だから教えてね、梓」
私がそういうと梓はもう一回溜め息を吐いて頭をガシガシと掻いた。
「突然どうしたの」
「飽きっぽい梓が弓道にはまってるからどんなもんなのかなーって」
「ふーん…」
本当は、梓と同じことしたいだけなんだけどね…なんて本人には伝えられないし。
「…ま、やりたいならそれでいいけどさ」
「…私にできるかな」
ボソッと、小さな不安を零す。
これは色んな意味でできるか、だ。
正直私は人付き合いが得意ではないから弓道部に入って部員達と仲良くできるかわからない。
それに、梓みたいに矢を的に当てられることができるかもわからない。
私が俯くと、梓はこう言った。
「ただ弓を引くだけなら誰にでもできるよ。それだけなら、ね」
ただ弓を引けるだけじゃ無い。
梓と対等になれるように、梓と同じ場所に立てるようになりたい。
そしたら、梓に言うんだ。
「梓みたいに矢を的に当てたい」
「それじゃあちゃんと練習しなきゃね」
にやり、と効果音がつきそうなほど意地悪く笑った梓に私は唇を尖らせた。
「…梓が教えてよね」
「僕は厳しいけどそれでもできる?」
そう言って顔を近付けてジッと瞳を覗きくんでくる。
できるできないじゃない。
私はやってみせる。
これは、私が成し遂げたいことだから。
私が前に進むためにも。
「やるよ。私はやってみせる」
「…そう。じゃあ僕がみっちり教え込んであげるよ」
私は梓の言葉にうん!、と元気良く頷いた
。
私の未来のために、成し遂げてみせる。
私が梓に想いを告げるのはまた別のお話…。
弓道をやりたくてやりたくて書いちゃった。
Mon 05:07:07