Conversation sentence

ふたつの欠落品@翼

私と翼は、どこか欠けていた。
私は痛みを感じることや、泣くことができなかった。
翼は、笑うことや怒ることができなかった。
人として大切な感情の一部が、欠落していた。

「なんで私と翼は違うんだろうね…」
「きっと、俺達が特別なんだよ」

翼は毎回そう言って私を励ました。
翼の言葉は私にとっては全てだ。
翼が人を殺せといったら私は迷わず殺すだろう。
いつからだったか、翼が気になり始めたのは。
そんなのはもう忘れた。
ずっと、昔から一緒にいた翼に私は惹かれていた。
それは翼も同じで、気が付けば私達は付き合い始めていた。

「この頃、君と一緒にいると嬉しいんだ」

そういった翼の口角は上に上がっていて、初めて翼が笑った。
その笑顔はとても、とってもぎこちないものだったけど、すごく綺麗だった。
気が付けば、私の頬を涙が伝っていた。

「泣いてる…?」
「…可愛いよ」

翼はそう言って、また笑った。
私の涙は止まることを知らずに流れ続ける。
この体が、渇れるんじゃないかってくらいに。
これは、嬉し泣きなんだ。
翼に会えたことと、ふたりで欠落していたものを掴み始めたことに。

私達は、ふたりでひとつ。
ひとりでは頼りなくて歩いていけなくても、私達ふたりならきっと進んでいける。
大きな未来へと。



翼くんおたおめでした。
一時間と一四分も過ぎてしまいました…。
こんな感じの話好きだな、と。
終わり方が好き。

title by joy
Mon 01:14:50
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