死んでも御免だね。




絶大で理不尽な権力を行使する国と、その横暴な国政に反逆を掲げる若き少年少女で構成された反乱軍の戦いが佳境となっていた頃の話。

廃墟と化した街。
吹き荒ぶ風に混じるのは、噎せ返るほどの血と硝煙の匂い。
砂埃が舞っているせいで辺りの視界は狭い。
が、苦しげな呻き声は間違いなく、志しをともに反乱を起こした仲間のものだ。


「―――…どうして、こうなった…っ」


ほんの数時間前のこと。
彼らは敵軍を廃墟の一角に誘い込み、予め潜伏させていた仲間とともに一斉攻撃で一網打尽にする作戦を実行するべく各々が指定された配置へと着いていた。
先に仕掛けた撹乱戦により敵は易々と誘導され、作戦は順調に進み。
後は予定通りに一斉攻撃に移る、はずだった。


「所詮はガキの浅知恵。詰めが甘いんだよ」

「……っ」


勝利を確信し一斉攻撃を仕掛ける直前、おびただしい弾丸を身に受けたのは、彼らだったのだ。
誘い込んだつもりが、逆にまんまと敵の策に填まってしまったらしい。
気付けば前方後方を敵に囲まれ、身動きが取れない状況に陥り、今に至る。


「く、そ…っ!」

「こりゃ全滅するのも時間の問題だな。と、言いたいところだが…」

「…っ……」

「脆い牙で命知らずにも国に反逆を掲げた貴様等に、せめてもの情けをかけてやらなくもない」


敵の眼前で地に身を伏したその姿のなんと惨めなものか。
唇を噛み締め心底悔しがる彼に、情けだのと口にする軍人の男の顔には嗜虐的な笑み。

何が、情けか。


「偉大なる国に歯向かった愚行を恥じ、地に膝を付いてせいぜい醜く命乞いをしてみるんだな」


卑下たその言葉のどこに慈悲があるというのか。
こんなの、どう見ても自分が不動の強者なのだと驕り、他者を見下しているだけじゃないか。
そんな奴等の前で命乞いしたところで、救われるわけが無い。


「――…国に媚びて、飼い殺されろってか?はっ、死んでも御免だね。」


貴様等に乞うくらいなら文字通りに死んだほうがマシだ。
傷だらけてボロボロだが、身体はまだ動く。


「偉大なる国?よく言うぜ。ただ私腹を肥やしたいが為の安い忠義しかねぇくせに」


こちとら、決死の覚悟で国に挑んでんだ。
どんなに絶望的な状況でも、絶対に屈しない。
諦めるわけにはいかない。


「醜い姿が見てぇなら、ご希望通りに踊ってやるよ」


見せ付けてやるよ。
足掻いて足掻いて足掻きまくって、この窮地を脱してやる。
そして国を壊し、自由を手に入れるまでは…――

俺たちは、
死ぬわけにはいかねぇんだ。



死んでも御免だね。


(立ち止まってる暇は無い)

(志しを捨てるなんざ、)

(死んでも御免だね。)


2012.3.30




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