【琉狩・由狩ハピバ】
2015/11/17

我らが暴君、もとい司令塔の命により調査した内容と結果をここに報告させていただきます。

調査対象:
風萬琉狩・由狩(通称 風萬双子)


遡ること二年前。もとから不仲が目立っていた双子の仲を更に最悪にした出来事がありました。
当時、暗く深い事情があって殺気立っていた弟の風萬由狩。兄の風萬琉狩はその事情の上辺しか知らず、弟の逆鱗に触れてしまったのです。
こういうと兄の琉狩が一方的に悪いように見えてしまいますので、彼はすべての真実を知れる立場の人間ではなかった…――と補足しておきましょう。仕方ないのです。これが軍社会ってやつなのですから。かくいう私も、真実とやらは全くこれっぽっちも知りもしませんが。

その後、双子は血腥い殺し合いに等しい兄弟喧嘩を展開。壮絶な喧嘩をどう第三者が止めたかは長くなるので割愛しますが、重傷を負った二人を手当てした人物は揃って同じことを言っていました。「血の繋がった兄弟が、よくここまで容赦無くやり合って、死ななかったものだ…」と。
ついでに、某不良養護教諭によると「タフさは化物並だが、中身はガキそのものだ」だそうです。

話を戻しましょう。
兄弟仲が最悪にまで悪くなったわけですが、その二年後の春に転機が訪れます。
それは、皮肉屋で曲者と名高いかの女子の司令塔昇格でした。
心境の変化があったのは兄の琉狩のほうであったというのは確認していますが、残念ながら彼から心情の変化について聞き出せなかったので詳細は不明です。しかし、「大きなきっかけになったのは事実だ」と仰っていました。
その“きっかけ”により真面目で誠実な性格だった琉狩は、由狩に謝罪し歩み寄ろうと決めたそうです。この頃には多少落ち着いていた由狩のほうも「やりすぎた」と謝り、和解できたとか。

ただ、すぐに“仲良しな兄弟”にはなれなかったようです。幼い頃から“兄弟”らしいことをしてこなかった彼らは、互いに自身の片割れとどう接していいのかわからず関係はぎくしゃくしたまま。そう、例えるならまるで…――相手が気になって仕方ないけど、話し掛ける勇気がない不器用な恋愛初心者みたいな感じです。はい。

そして、現在―――


「…写真?」

「え、なに、また何かやらかしちゃったの?」

「あくまで調査ですー。先輩方のご協力を要請しまーす」


写真を撮らせてください、と調査対象の二人にお願いした私。いきなりの申し出に兄の琉狩先輩が怪訝そうになるのは理解できる。が、すぐに私が粗相をおかしたと決め付けるのは如何なものかと思うのですよ、由狩先輩。貴方の残念さに比べれば可愛い程度の悪戯ですよ。


「うん。杏子ちゃんがそんなだから予想できるんだよ…?!」

「本当に懲りないな、君は…」

「ご安心ください。写真は報告以外の用途には使いませんから」

「その報告とやらが問題でもあるんだって」


いやですね。心外ですね。こんなにも可愛い後輩が頼み込んでいるというのに、どこに何の問題があるというのでしょう。女好きと有名なくせに、女の子を信用できないなんて。


「……俺、今なら茜子ちゃんの苦労がわかる気がする」

「ついでに、僕の苦労も理解してくれるといいんだかな」

「ここまで手のかかる弟じゃないつもりだけど?」

「はいはーい。もう切りがないので勝手に撮りますねー」


パシャリッ。
些か無理矢理ではありましたが、無事に風萬双子のツーショットをゲット。まあ、改まって撮らせてもらうよりも自然な普段の様子が写っているほうが報告書には相応しいでしょう。結果オーライです。


結論:
かつては殺伐としていて双子らしくも兄弟らしくさえもない二人でしたが、現在はゆっくりと関係が改善されている模様。写真にうつる、二人の不器用でぎこちない笑い顔が何よりの証明です。


報告日:20XX年11月17日
報告者:烏杜杏子





追記:
一部に不適切な部分があったとかでペナルティが追加されてしまいました。しかし、例の写真を無償で二、三枚焼き増しするだけで済んだのでホッとしています。

余談:
好奇心にかられ、焼き増しした写真をどうするのかと司令塔に訊ねてみたところ、「安心させたい人がいるのよ」と言って穏やかな瞳をして微笑んでいました。

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