【由狩×柚乃(@s_nyah)SS】
2015/09/30

【由狩×柚乃(@s_nyah)SS】


月夜の暗躍は避けるのが暗殺部隊の定石。月の光で明るい夜は闇に紛れにくく、標的や敵に気付かれるリスクが高くなるからだ。
しかし、そんなリスクをものともせず己の感情1つで動くバカはいるもので…――


「ゆーうーのーっ、一緒に月見しよー?」

「っそんな大声で言うやつがあるかー!!」


場所は白軍学校の敷地にある女子寮の一室。白を基調とした女子制服に身を包んだ少女、望月柚乃は突然窓辺に降り立った来客の姿を見て額に手を当てた。
来客の少年が身に纏っているのは、白軍では目にするはずのない黒い学ラン。それは白軍と敵対する黒軍に属する者だという証だった。


「今夜は十五夜で、満月の夜だよ?満月の別名は望月、望月といえば柚乃!そりゃあ柚乃に会いたくなるって!」

「いつも満月とか関係なく来ているだろう…」

「俺の身を案じてくれるのは嬉しいけど、まずは中に入れてくれるかな?」


このままだと誰かに気付かれるから、とあくまで自分のペースを崩さない少年、風萬由狩。恋人である柚乃の心配をよそに、いやに笑顔なこの男(バカ)のなんと憎いことか。


「まったく…、誰か来たらどうするんだ」

「ああ、君の後輩には餌(月見団子)を撒いてきたから大丈夫だよ」

「……なんなんだその周到ぶりは…」


月がよく見えるようにと由狩は部屋の電気を消し、もう呆れて溜息しか出ないと零す柚乃の背を押して窓辺へと寄る。
人工的な明かりを失った部屋には柔らかな月光が降りそそぐ。硝子越しに空を見上げれば、美しい白銀の満月が夜空を彩っていた。
暫し2人は静かに月を眺めつつ寄り添う。


「……きれい…」


ポツリと小さな感嘆が柚乃から零れた。その呟きに由狩が彼女を見やると、彼ははっと息を飲んだ。柚乃の色素の薄い髪は月の光に照らされて、真珠のような美しい色に染まっていたのだ。
自然と伸びた由狩の手。神秘的ともいえる真珠色の髪を指先に絡めて、ふと彼は目元を和らげる。その瞳には、どこか悪戯な色を浮かべて。


「ほんと…、月が綺麗ですね」


まっすぐ柚乃を見つめて紡がれた言葉。それは夜空に輝く月への賛辞ではなく、由狩の心からの言葉なのだと、彼女は気付いてくれるだろうか…―――


2015.9.29



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