【薙智くん(@ko_me0217)×あげは】
2014/08/25

薙智×あげは


生まれながらの毒耐性に、体液が毒という特殊な毒体質。
生まれてすぐに白軍の施設に引き渡されたワタクシは両親の顔を知らず、温もりも愛情も知らずに育った。そんなワタクシが覚えたことといえば自分の体と、毒体質の使い方。それから暗殺、いわば人の殺し方くらいだろうか。

灰羽あげは、高等部一年の春。
中等部から引きつづき暗殺部隊に所属することは決まっていた。が、暗殺部隊は本来公にされていない裏の部隊であるため、表の部隊にも所属する必要がある。そこで配属されたのが一般部隊の、灯練薙智が率いる部隊であった。

これが、ワタクシと薙智センパイのはじまり…―――


「――…あげは」


耳に心地よい声が響く。
意識の浮上を感じてゆっくりと瞼をあげれば、すぐ目の前には優しげに微笑する薙智センパイの顔があった。


「ん…、おはよ、ございますー…」

「おはよ。…いつもよりは少し、遅いお目覚めだな」

「……まだ眠たいです…誰かさんのせいでー」


くすっ、と笑う彼に不満げにそう言うも、さらに笑みが深まっただけで何の効果もない。こっちは睡眠不足と体の倦怠感に参っているというのに、だ。


「あげはが可愛かったから…つい、止められなくて」

「つい、で全部許されると思ったら大間違いですよー」

「はいはい…無理させて悪かったよ」


機嫌を直せといわんばかりに撫でられる頭。絆されてなるものかと思いつつも、その手が気持ちよくて目を細めてしまうワタクシは薙智センパイに甘すぎやしないだろうか。
これが俗にいう惚れた弱みだとしたら、まったくもって厄介な情である。

それもこれも全部、彼がワタクシに温もりと愛情を与えたせいだ。
出会った当初の薙智センパイは殆んど毒耐性がなくて、ワタクシに触れることすら危険だったというのに。ちょっとした成り行きから耐性をつけるお手伝いをしてるうちに、ワタクシたちは恋仲になっていた。


「…まさか、ワタクシの毒がまったく効かなくなるとは思いませんでしたよ…」

「そのおかげで、俺はあげはに触れられるんだけどね?」


ぎゅっとワタクシを抱きしめる腕には一切躊躇いがない。
どういうわけか、特殊な毒耐性を身につけてしまった薙智センパイ。キスも、それ以上のことをしたって、彼がワタクシの毒に侵されることはない。故に、ワタクシに愛情だけでなく、優しい温もりも与えられるのは薙智センパイだけなのだ。


「あったかい…」


薙智センパイの胸元にすり寄って、その温かな体温を感じたくて目を閉じる。優しい匂いを肺いっぱいに吸い込んで、大好きな彼の温もりに包まれているこの時がとても幸せ。


「……好きですよ、ちさと」


甘く囁くような声でそう告げれば、頬を染めてはにかむ薙智センパイと視線が交わった。
ゆっくりと近づく顔に意図を察して、おとなしく目を閉じたと同時に重ねられた唇。「俺も…」とどこか熱っぽい囁きを耳にして満たされた心とは裏腹に、相手を求めるように何度も繰り返される口づけ。


人がこんなにも温かったなんて知らなかった。
与えられる愛情が、こんなにも心を満たしてくれるだなんて知らなかったですよ。

願わくは、大切なあなたにも、この温かさと愛情が伝わっていますように。



2014.8.25



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