≫犬塚×輝一(@s_nyah) 短編
2014/08/01

犬塚×輝一

最盛の暑さをもたらす八月。
共通の友人である神楽坂雅季の気遣い(?)により、どうにか犬塚瞬と多々見輝一が両想いとなって一ヶ月が経っていた。


「……瞬、熱いんだけど…」

「んー…」


世の学生は夏休みの真っ只中。
本日、犬塚の自室にて行われているのは勉強会…――だったはずなのだが。課題の進み具合を大いに左右したであろう雅季の欠席で、もともと無かったやる気を犬塚は完全に喪失させていた。
現に今は課題をそっちのけで、アイスを食べながら輝一に引っ付いている。


「神楽坂がいないからってダラけすぎ…」

「輝一だって一緒にアイス食べてるだろー?」

「……こんなふうにされてたら、それくらいしか出来ないし」


後ろから犬塚にすっぽり抱き込まれ、腹には彼の片腕が回されている輝一。そんな態勢では手くらいしか満足に動かせないため、ぶつくさ言いながらもおとなしくアイスを咀嚼する。
もっとも、本気で嫌ならばとっくに振りほどいているのであるが。


「何だかんだで万更じゃなさそうだけど?」

「ぅ、るさい…っ」

「ほんと、可愛いんだもんなぁ」


反抗的な言葉とは裏腹に、赤く染まった耳が愛らしい。ぎゅっと抱き締めて、可愛い可愛いと何度も口にすれば照れ隠しなのか頭を小突かれてしまった。
しかし、それでも懲りない犬塚は彼の赤い耳にキスを落とす。


「…ッ!?」

「ん…、どした?」

「おまっ…口、冷た…っ」


ビクッと跳ねた体に、どうしたのかと思えば。どうやら先程のアイスで唇が冷えてしまっていたらしい。
空いた手で唇が触れた耳を押さえ、ビックリしたと真っ赤な顔で振り返る輝一。
その表情がまた犬塚の劣情を煽る。彼の頬に手を添えて、今度は唇にキスしようと徐々に顔を近付けていった…――のだが。


「……あ」

「ん…?ちょっ、アイス溶けてる溶けてる!」

「何か拭くも、の…って、ぁ、やっ、瞬…!?」


食べかけだったアイスが溶けてしまったらしく、とろりとした液体が輝一の手首を伝っていた。残りのアイスをすぐさま口にし、垂れたものも拭き取ろうとするが、それよりも早く動いたのは犬塚のほうだった。
アイスの滴が零れないように輝一の手を口元に引き寄せれば、それを舌先で拭う犬塚。その光景を目にした輝一は恥ずかしさから手を引き戻そうと動く。


「っん…ゃ、めろって…っ」


しかし、力を入れて引き戻そうとしても犬塚の手はびくともしない。制止の声は聞こえているはずなのに、舌は手首から指にまで這い上がってきていた。
まるで、情事を連想させるような舐め方をするのだから質が悪い。卑猥な光景から目は逸らせても、丹念に絡ませてくる舌の感触まではどうにもできず。輝一は肩を震わせつつも、彼が満足するまで耐えるしかなかった。


「……ん…そんな、顔赤くして、どうした?」

「…っ、誰のせいだと…っ」


ちゅっ、と短く響いたリップノイズの後に解放された輝一の手。その手に残る舌の感触や熱が消えないかぎり、頬の赤みが引くことはないのだろう。それを知っていて、わざとらしく様子を窺うのだから犬塚は本当に意地が悪い。
機嫌を取るかのように額や頬や唇などにキスするも、彼の両手は輝一の体を服越しにまさぐっていた。


「ぉ、まえっ…課題は…っん」

「…今日さ、俺たちが付き合って一ヶ月になるんだよ」

「っだか、ら…?」

「何もしないってのも、寂しいだろ?」


にっこりと良い笑顔を浮かべる犬塚だが、その瞳はすでに熱っぽかった。輝一も輝一で先程から体の奥が疼くような熱を感じていたようで、理由や成り行きはどうであれ拒む気はないらしい。


「……続き、してもいいけど…ちゃんと、愛せよ?」

「…!もちろん、望まれる以上に、な」


クスクスと二人で笑って、想いを確かめるように何度も口づけを交わす。互いの熱を感じるために求め合い、抱き合った。

二人では初めて迎えるこの季節。
課題なんてそっちのけにして、まだ始まったばかりの夏を一緒に堪能しようと、二人は愛し合いながら語っていた。



2014.8.1



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -