【風萬琉狩】
2014/05/07

風萬琉狩は由狩の双子の兄。二卵性双生児であることから、あまり似ていない。軟派で自由な性格の由狩とは違い、真面目で従順だったため両親からの期待を一身に受けて育った子。
幼い頃の兄弟仲は、どちらかというと不仲。由狩は血の繋がった兄弟といえど正反対な性格からか琉狩にあまり興味を示さず、両親により黒軍支持派の考えを擦り込まれた琉狩は親の意向に背く由狩を良く思っていなかった。

風萬家と同じく黒軍支持派の毒島家の姉妹とは面識はあるが、そこまで親しいわけではない。むしろ優秀だが思考が読めない憂が苦手で、当時は甘く可愛い妹でしかない妖を嫌っていた。
しかし、後に由狩との兄弟仲、妖の印象ががらりと変わることに。それは高等部一年生の頃、憂の死がきっかけ。琉狩は暗部ではなかったため憂が死にいたった本当の事情など知るはずもなく、公式に発表された「部下殺し」の汚名を真に受ける。そして負傷はしたがどうにか生き残り、近付くのを躊躇うほどに殺気立った由狩と会う。
そこで琉狩は一番触れてはいけない由狩の逆鱗に触れ、「あの人のことをよく知らないくせしてっ、憂さんを侮辱するな!!」て刃を向けられる。この時の(殺し合いに等しい)喧嘩で琉狩は左眉から頬にまで及ぶ傷を負い、後に傷痕として残る。兄弟仲は最悪となる。

由狩も怒りで我が身を顧みずに突っ込んでいったせいで右肩、横腹、腕、脚などに傷痕が残っている。それから二年生となり、高等部に妖が入学。琉狩は妖を嫌っていたため声をかけることはなかったが、ちらっと見かけた時に彼女の雰囲気が昔と様変わりしていたことに驚く。が、姉が死んだことで変わったのだろうと、この時は簡単に解釈する。やがて妖が二年に上がると同時に司令に昇格。妖の瞳には強い意思と覚悟が感じられ、記憶にあった「甘く可愛いだけの妹」の面影はどこにもなく、その変貌ぶりに琉狩は畏怖の念すら感じた。
そんな琉狩は珍しく妖に問い掛ける。「何故そんなに堂々としていられるのか」と。すると妖は皮肉に笑って「何も恥じることはないからよ」と返す。そこには姉への信頼がありありと込められ、悲壮など一切見受けられなかった。

それから琉狩は考えるようになる。由狩の怒りの理由。妖を変貌させたもの。憂は、部下殺しなどという汚名がつくような人物であったか。他人の言葉を一切遮断して自分なりに考えれば考えるほど憂の死に疑問が浮かんできて、ここで漸く自分が愚かだったことに気付く。
憂のことは苦手だったが、部下殺しなんてするような無能な人ではなかった。その人格はあの由狩が尊敬するほどで。公式に発表された事実が偽りであったなら、妖の変わりようにも合点がいく。琉狩は狭い認識の中で決め付けることが、どんなに馬鹿なことだったかを思い知る。

真面目な琉狩は、兄弟仲が最悪となったままの由狩に自分が悪かったと謝罪しに行く。すると、この頃には落ち着いていた由狩も、あの時はやり過ぎたと謝ってきた。これをきっかけに兄弟仲は改善され、現在は幼少の頃よりは話すように。
しかし、今まで兄弟らしいことは全くしてこなかったせいで互いに相手の接し方がわからず、どこかよそよそしい。琉狩は妖にも過去の数々の非礼を詫びに行く。が、妖は謝罪など不要だと首を振る。「あなたは間違ってない。あの頃の私は、姉を追い掛けてるだけだったもの」と。
この時の琉狩は妖の成長ぶりに感心するも、姉の死で変わらずにはいられなかった妖に少し同情する。司令に昇格した頃から薄々気付いてはいたが、彼女は年相応の顔を殆んどしなくなっていたからだ。そこにもまた恐れを感じた。

兵士(司令)として化けた妖の素質、変わることを享受した覚悟、姉への濁りのない信頼。それらの全てに多大な畏怖の念を抱き、妖が辿る先を見届けたくなった琉狩は彼女の部下になりたいと懇願する。
最初は驚いていた妖だが、彼の真剣さを認めて琉狩とその部隊を自身の配下に置くことを決める。真面目かつ誠実な性格で、実力面も申し分のない琉狩は妖の懐刀となった。



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