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 夢というものは、大概にして五感を除く外からの干渉がない。自分の中でだけ展開される世界は、すなわち自分こそが作り上げるものだ。意識化で考えた彼については先ほどの通りだった。覚えるくらいじろじろ眺めたつもりはないし、

 ましてや彼のジャージの中を見る機会なんて──、


─(やめんか、部活中だぞ!)


 姿を視界に収めた回数で言うなら周りに居るチームメイトの方が確実に多い。一昨日の試合中とて青学の方を重点的に見たのだから、もし出てくるのなら手塚国光ではないのか。

 そこまで思い至って、コートを出ながら急に眉間を狭めたさまを捉えた柳生が『真田君は昨日の星徳戦の詐欺ペテンを、まだ気にしているのだろうか』と眼鏡の奥で考えた。それがお得意のレーザーに似合わず的外れだとしても、あの顔を見たならだいたい皆がそう思ったはずだ。




─(だが手塚は、無いな……)


 そこで話題が個人的な好みへ移ってしまったことについても、もちろん誰一人気付かなかった。

 どっちがタイプかと訊かれたら、俺は迷いもなく奴だと答えるぞ──、そんな勝手な上から目線を、汗を拭いながら右上へちらりと泳がせた時には、部長の幸村も『アイツ、どうせ根に持ってるだろうな。謝らないけど』と軽くため息をついた。そんな『神の子』ですら、アイツがゲイだとは知らなかったからだ。


─(紫、リーゼント、眼鏡……)




 帽子を頭ごと乱暴に引っ付かんだ。タオルをだらり顔に被せてから、いい加減正直になった真田は、夢中の彼をじっくり思い出すことにした。

 モノクロの世界に、鮮やかなのは彼だけだった。もう少し詳しく言えば、そこにあったのは自分の部屋と、いつも使っている布団だけ。そこに居たのが自分に向かって手招きをする、艶やかな姿。




『さぁ、』




 美しく筋肉のついたしなやかな肢体。触れられるのを誘うような腰のラインに手を回し、鎖骨にほとんど噛みつくように吸い付く。熱を持った両足を割って膝を差し入れただけで、言葉に出来ないほどの恍惚感にみまわれ支配欲が溢れ出した。彼は上品で高貴、そして殺されそうなほどに魅力的だったのだ。




『俺を、愛しなさいよ』




 とはいえ、一度も口に出さなければ現実には“何も起こっていないこと”だ。実際の彼は良く知らないし、現れたのもきっと勝手な想像の彼、理想の姿なのだ。にもかかわらず、それから前傾姿勢で真田が便所へ直行したその日、部内ほぼ全員の記憶の中では、『副部長はどうやら腹を下していたらしい』ことになった。


 夢は、夢のままだ。




***




「あい、見ーばっぺーさぁ!」
「ふらーが、死なすどー」

「ははははは」


 そして、今は現実だった。

 何を言っているのかわからなかったことが逆にどこの言葉であるかを判別できる。両の目より早く全神経をやった先に見えた、濃い紫のテニスバッグたち。それはえらく横長に広がって続いていた。


「すぐ、戻る」
「まさか、今日も腹痛いのか?」

「…………」


 もうすぐ集合だからな──、その一言を耳たぶの裏側で受け止めながら真田は、荷物を置きに来た観戦用のベンチを暖めないままあとにした。

 吸い寄せられるように階段を昇る。通路を気だるそうに闊歩するこの一群の頂いただきに誰が居るのか、確かめたくて。




「……?」




 意外とすぐ彼が振り向いたから、長い襟足は半分も見えなくなった。

 アリーナの外からまばゆい朝日を浴びる、その浅黒い肌に、首筋に、自分が落とした痕はない。あるわけもないのにどこか、夢を見てしまったのだ。眼鏡の奥に、あの魅惑的な光を探して。


「ぬーやが、」
「通ーゆんやいびーが?」


 スイミーだと? そうかもしれん──。真田はそんなことを考えた。確かに今自分は、色合い的に魚の眼みたいにはなっているかもしれない。ぶっ飛んだことを思い付くのもきっと、胸も思考もいっぱいだからだった。




「……邪魔みたいですよ、皆さん」




 だが。あの深く濃い瞳には何も映らなかったのか。形の良い顎をついと戻すと、大魚の頭はそのまま進み出してしまった。キラリと光ったのは眼鏡の端だけだ、

 彼の世界に、自分は存在すらしていないのだ。




―(俺は、大馬鹿者だ……)




 本物の木手永四郎は去っていく。その海のような眼差しの先に『青』が広がっている気がして、真田弦一郎は空にすら嫉妬した。





***








ああ、お前が欲しい。








 そんな夢は夢のまま、潰える。




end
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2 /2 夢に果てる


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