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**




「彼を倒すのは……俺だったのに」




 ふと、そんな声が聴こえた。

 洗面所より戻る道すがらだ、スタンド席入り口方面のここからでは逆光になり、姿がよく見えない。せっかくの野次とはいえ自分たちは今も試合中だったから、飛ばされた者は残念ながらそれを捨て置き、早く仲間の居るベンチへと戻らねばならなかった。だがその言葉はやけに、この瞬間の彼の耳についたのだ。


「同じセリフを言った奴が、居る」


 歩みをゆっくり止めて、真田は声のした方角へひとまずそう放ってみた。もちろん自分に対するものだと踏んだ上で、だ。

 すると未だ重い両の足が地面にじわり食い込んでしまい、まるで根を張ったように、動かなくなった。近寄るのも億劫になったので、体が幹と化したまま『さっきの言葉に続きはないのか』と待ってやることにする。




「その人は彼と、戦いましたか?」




 案外早く返ってきたそれは、人物を特定するのに容易だった。近づく独特に訛った声と同時に現れた姿も想像通り、濃い紫に大きく白の入ったジャージを着ている。

 その後で、日差しに細められた眼鏡越しの両目を見つけた。


「……いや。口だけだ」
「そう、じゃあ俺とは違いますね」


 どう違うかは、真田にもわかった。かつ、その違いにどんな差があるのかも。

 それはただ“彼と対戦したいかどうか”でなく、“彼の強さに触れ、彼を追う身になったかどうか”を意味していた。以前その発言をした後輩は、関東大会で手塚が敗れるのを見ながら前者の意を込めて使ったはずだ。そして今少し離れた場所に居る人物は恐らく、後者の方を言ったのではあるまいか。そんな彼に先駆けたかもしれない者は、だからこそこう問いかけた。


「殺し屋ではなかったのか」
「変えるつもりはありませんよ」


 わずかに回答を含んだそれを確かに聞き終えた後で、真田は大地から足を引き抜くよう片方ずつ力を込める。これ以上の長居は無用に思えた。




「ああ。それも良いだろう」




 この真田とて知らないわけではないのだ。まさにかつての自分が、感じた通りだった。“学校”でなく“個人”としてネームバリューを持つ者の、なんと輝かしいことか。更にはその誰かの代わりとなり、自らが追われること──、

 それを他でもない己自身がどれだけ、渇望しているのかを。


「ではな」


 依然として両膝は痛み、足は重い。だが自分が追うことには疲れてなどいられないし、安易に人へ手を差し伸べる余裕もまた乏しかったのだ、孤城の皇帝には。




「やはり、気が変わりました」




 歩き出す直前。ならばこの男は何故俺に──、手塚でなく自分に声をかけたのだろう。こう考えたところだった。


「何の話だ」


 見据える先に立ちはだかった邪魔者など、さして興味もなかろう。自分がそうであることによって組まれる簡素な思考回路では、行間でやりとりした末に投げかけられた一言も、すぐには理解しえなかった。

 だからもう一度だけ、振り返ったのだ。


「もがく姿も、捨てがたいからね」
「随分な物言いだな……、木手永四郎」


 ただ殺し屋らしいセリフではある。続いたその補足は真田にそう捉えさせた。初めに聴いた、負け犬じみたあれよりは格段に、だ。


「誉めたんですよ俺は、キミを」

「余計なお世話というものだ」
「でしょうね……」


 キラリと光った眼鏡のせいで、今度はこちら側が目を細める番になった。気が変わった──、そうは聞いたものの、強がりで返した真田には、自分の何が木手を回復させるに至ったかを察する時間が限られていた。

 話しかけられた理由も、すでに聞けそうにない。


「木手」
「では、真田クン」




──また会える日を。




 そう呟いた姿は声より先に、消えたのだ。




end
※さなたん2010


シャイニー


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