あーーーーん | ナノ
(拓蘭)


混みあっている店内、外と中とを隔てるガラスに向き合うようにして設置された背の高い椅子に二人は腰を掛けた。だいぶ暖かくなった日差しがちょうどそこから見える街の景色を照らしている。
紅茶の香りをかいで満足そうに微笑む神童を余所に、霧野は「いただきます」とさくら色のケーキをフォークで一口サイズに切って口に運んだ。口内に広がる甘い苺の味が舌や頬の内を溶かしていくようで、フォークを持つ反対の手で頬を押さえる。そのまま二口、三口と食べてケーキが半分になったところで、フォークを置いて氷の浮かぶダージリンのグラスを手に取った。
「おいしそうに食べるな」
横から霧野の食べっぷりを見ていた神童がくすりと笑う。言われた本人はきょとんとした。神童が物欲しそうにこちらを見ていると思った霧野は「一口食べる?」と聞いた。一口切り取って神童に差し出す。
「ほら。あーーー」
ずいっとフォークを差し出され、神童は少し迷ってそれにかぶりついた。
「ん、」
「ん」
「……」
「どう?」
「ん。おいしいな。思ったよりさっぱりしている」
「だろー」
「あ、おい…」
ぺろりとフォークを舐めて、何事も無いように霧野ははにかんだ。



あーーーん
120512

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