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(隼総と喜多)

※ゲーム発売前に書いたものなので、隼総と喜多は同じ二年生の設定です
※隼総は転校生


「は、お前今時ケータイ持ってないの?」
「ああ。だから何かあったらここに連絡してくれ」

そう言ってクラスメイトで、サッカー部のキャプテンである喜多から渡された紙には十桁の番号が書かれていた。自宅の番号らしい。マジで今時ありえねーだろ…天然記念物並。とまあ、所詮自分はシードとしてこの学校に派遣されただけ……そこの部員らと仲良しこよしする気などない。こんな番号貰っても無駄になるだけだと思いながらポーズなので仕方なくアドレス帳に登録した。





しかしその番号を使う機会はやってきた、しかもその日の夜。帰宅してから明日の時間割が分からないことに気付いたのだ。転校初日で時間割表を貰うのを忘れていた。ついつい舌打ちしゅてしまう。生憎メアドを知っているクラスメイトはまだいなかった。知っているのはあのキャプテンの家の番号だけ…。
暫く悩んだ末に聞くことにした。背に腹は変えられぬ、ということだ。
アドレス帳から「喜多一番」の名を選び通話ボタンを押す。プルルルと何回かのコール音の後、ガチャッと受話器を取る音がして『もしもし』と母親らしき女の声がした。

「もしもし。えっと、天河原中サッカー部の隼総ですが、一番くんいらしたら代わっていただけませんか?」
『一番? ちょっと待ててね』

保留音に切り替わることなく、奥の方で「お兄ちゃん、部活の子から電話ー」と声がした。待っているとまたガチャッと音がして『もしもし』と喜多が出た。

「隼総だけど。あのさ、明日の時間割教えて」
『時間割? わかった。ちょっと待っててくれ』

今度は保留音に切り替わり、二、三分してまた喜多が出た。

『今から言うけど、メモとかあるのか?』
「ああ、ある」

言ってくれと促すと喜多は時間割をゆっくり読み上げた。礼を言ってメモを取っていると喜多が『あの、』と切り出した。

『隼総くんは、』
「呼び捨てでいい。何?」
『ああ、すまない。隼総は、家どこら辺なんだ?』
「家?」
『越してきたばかりで通学路とか不慣れなんじゃないのか? 迎えに行くから、良かったら一緒に行かないか?サッカー部で朝練もしてるし…。ああ、西野空と星降も一緒なんだが』

人が良いらしいこのキャプテンはそれが気がかりで丁度俺に電話しようとしていたらしい。確かに今日は親に車で送ってもらったから実際の通学路は歩いていないから不安はあった。喜多の誘いを承諾して、住所を告げると案外近所だったことがわかった。明日の七時に俺の住むマンションの前に集合となった。

「わりい、世話になるな」
『いいや。同じチームの仲間だしな。改めてこれからよろしく』
「………ヨロシク」

しばらく沈黙が続いて向こうがおやすみと言ったので、俺もおやすみと答えて電話を切った。
仲良しこよしも悪くないのかもしれない、そう一瞬思った。彼には不思議な魅力がある。今日見た個性の強そうな部員たちがまとまっているのはきっと彼の人格と手腕によるものなのだろう。自分もその中の一人になるのだろうか。それは、初め思っていたよりも悪くないように思えた。悪くない…。悪くない……。



アイル・コール・ユー
120206

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