きみの言葉を待っている | ナノ
(拓→←蘭)


好きです。そう告げられて俺はまたかと内心溜息をついてしまった。よくわからないけど一年生の後半あたりから女子に告白されるようになった。最初のうちはその子が好きでなくとも単純に男として告白されるということが嬉しかったのだが(もちろん断り続けている。)、何回もそれが繰り返されるたびにそんな気持ちはとっくになくなっていた。

「すまない。今はサッカーに集中したいんだ」

これだと断る理由としては弱いらしいから、“好きな人がいるから”と正直に断ればいいのだが余計な詮索をされても困るから毎回サッカーのせいにしている。
こうして断るとき時々自分が告白をする方の立場だったら…と考えた。考えて即放棄する。だって霧野にそういう感情を抱いてるなんて知られたら絶対引かれて俺は霧野の友人以下になってしまう。だったらこの思いは一生俺の胸の内の箱の中で眠っていればいい。




「聞いてよ神童!」

まるで自分の部屋のように、俺の部屋のソファーを占領してくつろぐ霧野は溜息をついて「また男に告られた」と漏らした。相変わらず女子と見間違えられるような容姿をした霧野のことを、そういう目で見る男子がいると入学してすぐくらいに聞いたことがあったが、それが本当のことだと知ったのはまだ最近のことだ。

「お前も大変だな」
「ほんっとそうだよ。人の気持ちも考えろっつの。気持ち悪いだろ、話したこともない男から、付き合ってくれとか言われてさ、しかも理由が女にしか見えないとかありえないから!」

ものすごい形相で一気にまくしたてた霧野は最後にまた一息溜息をついた。天井に向けられた視線がふいにこちらを向く。

「お前だったらオッケーだすのに」

整った顔が俺をまっすぐに見つめ、よく見ればその瞳は切なそうに揺れていた。駄目だ……箱が壊れそう。



きみの言葉を待っている
110912

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