(蘭→拓モブ) 神童に彼女ができた。一緒に帰ろうといつものように言うと、顔を赤らめた彼がお前には言っとかなきゃなと言ってそれを伝えられた。 「ほ、本当だからな。昨日告白して、そ、その、オッケー、もらって…」 「そうなのか」 「それで、彼女、今校門で待ってるってメールがきて……」 ちらりと神童が手に持ったケータイに目をやる。 「だったら一緒に帰ってやれよ」 「でも、おまえと帰る約束だったのに」 「照れてないで行ってやれよ! 振られるぞ。ほら」 「照れてない! …悪いなほんと」 「オレとお前の仲だろ。じゃあな」 そうだなまた明日と言って神童は走って行った。薄情なやつ。ちょうどオレが今いる位置から校門が見えて、神童の彼女らしき子が立っているのも見えた。その子は同じクラスの子で、お淑やかで可愛くてちっちゃくて、守りたくなってあげるようなタイプの子。 走って行った神童がその子の元にたどり着いたのが見える。それから二人は歩き始めた。 ――今まであの隣にいたのはオレだったのに。 視界がぼやけると思ったらそれは自分の涙のせいだった。あれ、なんで。存在を認識したとたんそれは溢れて止まらなくなってしまった。ずきずき胸も痛い。あれれ、これってなんていう病気? まるでコンクリートの塊が胸を押し潰すかのように積っていくみたいで、その痛みは消えることなくオレを襲う。 思わずしゃがみこんで目を覆った。涙も痛みも全然止まらない。あの二人を見てると寧ろ酷くなっていくような気がして。 「神童っ、」 名前を呼んでも返事はない。当たり前だ。神童はもうオレの横にはいないのだから。 こんなに苦しいなら気付かなければよかった 110729 |