(拓蘭拓) 昔から近くにいすぎたせいもあるかもしれない。せっかくお互いに好き合っているとわかって付き合いだしたはいいけど、その次がなかなか踏み出せない。 そんな状態が一カ月程過ぎたある日、午前中の部活が終わった後霧野がうちに遊びに来た。自室でいつものように紅茶やらケーキを食べていたら霧野がふうと一息ついてこう切り出した。 「神童ってホントにオレのこと好きなの?」 いつもよりトーンの落ちた霧野の声は最後の方は完全に聞こえないくらいに小さな声だった。俺はというと、フォークを舐めた霧野の舌や唇が色っぽい、なんてちょっとドキドキしてたところに言われたものだから、自分のその浮ついた思考を取っ払って最もらしい答えを言った。 「だったらお前の告白にオッケー出してないだろ」 「ハハ、そうだよな」 どう聞いても納得していないような口調で霧野はそう言う。自分の思考を察知されてしまったのだろうかとヒヤヒヤし始めたころ、何か考え込んでいた霧野が「よし」と手を叩いて俺に目を瞑れと言った。 「な、何するんだ」 「いーから目ぇ瞑れって」 霧野に押し切られ大人しく目を瞑っていると、不意に唇に何やら柔らかい感触があり驚いて目を開くとそこにはスカイブルーの瞳があった。今のって、その、キスってやつで(しかも、ファーストキスだ)、さっきまで色っぽいとか、思ってたあれが、えと、俺の、唇に、 「拓人が。オレを待たせるからこうなるんだ。わかる?」 唇がまた触れ合うような距離で言われてますます思考がまとまらなくなる。切羽詰まった俺はそれでもなんとかこの本心は悟られないように(だってかっこ悪いだろ)「ごめん」と囁いて、負けじと今度は自らその距離をゼロにした。うわあああ、やっとこうやって恋人らしいことができたのはいいけど、これすっごい恥ずかしい。 近すぎて近付けない 110625 title::確かに恋だった ------------ 企画『大丈夫だよ。』様に提出させていただきました 拓人さんがヘタレすぎますねすみません 参加させていただいてありがとうございました! fromバランス (旧・ジョークじゃないから) |