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「ハァ……」


初登場にして溜め息をついたこの男、名を中之条環という。来良高校で教鞭をふるっており、教員生活8年目にしてアラサーという公私共に大事な時期を迎えたこの男。しかし、仕事で失敗したわけではない。むしろこの春から主任に抜擢されたのだから、仕事は順調。ではなぜ溜め息などついたのか。それはひとえに、彼の恋人が理由であったりする。


***

「もしもし」
「あ、臨也?」
「どうしたのこんな時間に。仕事中じゃないの?」
「、あのさ…」
「(……。)なあに?」
「その、だな」
「うん」
「今日は遅くなりそうなんだ」
「今日も、の間違いでしょ?」
「あぁ、まあ…うん」
「ふーん。」
「ごめん、」
「先生のばか」

<先生、お電話です>

「あ―…」
「…先生なんか嫌い。いいよ、もう帰ってこないで」
「え、ちょ」
「約束したのに。ばか」


それを最後に電話は切られた。
つまり彼は急遽残業することになりそれが原因で約束していたデートができなくなったことを恋人に伝えたところ、予想以上に機嫌を損ねた彼と仲違いをしてしまった、と。


(怒るとは、思ってたけど…)


まさかここまでとは。
どうしたものかと頭を悩ますがそれもほんの数秒のことで、数秒後にはもう彼の頭は生徒のことで埋め尽くされていた。


「あ―…テスト作んなきゃ」


(ばか、ばか)
(先生のうそつき)








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