04





あれから散々左京と交わって満足したのであろう光秀は、微かに寝息をたて左京の横で眠りについている。やはりというか、ここが保健室であるということなど光秀は気にも留めていないようだった。


(さて、どうしたものか)


光秀が横たわるベッドの傍らで途方に暮れるはこの男、名を柳瀬左京、何とも形容しがたい色香を放っているが、この見てくれで齢18だというから驚きである。そして左京が途方に暮れる原因というのが


(明智先生、だよな…)


そう、前世では左京の情人であった明智光秀なのである。勿論、左京にはその当時の記憶などかけらも無いので光秀の事はただの保健医として認識しているが。左京としては、光秀と交わったという事よりも、新学期早々にしかも男性教師と学校で情事にふけってしまった事に頭を悩ませているのだ。これが同級生の猿飛あたりに知れたらものの数時間で学校中の噂になってしまうだろうし、もしも織田学校長の耳に入ってしまったならば…


「是非もなし、ってか…」


自分の身に起こりうる最悪の事態を想定し身震いした左京は、更に深い思考の森に足を踏み入れて行く。それにしたって、美男子の光秀に迫られて誰がその誘いを断る事ができようか、いや、誰もが乗ってしまうだろう。そう、自分もそのうちのひとりである事くらい、理解していた。


(しかしそれにしたって…)


明智先生は随分と自分を求めてきた。まるでこれまでに幾度もそうしていたかのように。かくいう自分も、男を抱く事にさして違和感も嫌悪感も感じず、むしろ自然に行為に及んでいたのだ。初対面であるのにもかかわらず。


(左京、左京、と)
(まるで恋人のように)


そう、彼はまるで恋人同士であるかのように己に愛を囁き続けたのだ。考えてもみればおかしな話だ。見ず知らずの男に対してアイシテル、なんて。きっとこの教師は人違いをしているに違いない。でなければ、死んだ誰かの面影を己に映して淋しさを紛らわせて居る、とか。情事後特有のけだるさの中、かすむ思考で考え付いたのはここまでだった。







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -