03




運命、
とはよく言ったもので、光秀が前世で命を絶ってから400年程経った今、光秀は再び明智光秀として現代に生を受けていた。しかし無情にも今までの22年の間に左京に巡り会うことはなく、時は過ぎ、今春から保健医として高校に勤めることとなっていた。何の因果か、過去に己が討ったはずの信長公が治めている学校に。


(それにしても、子供というものは…)

元々、騒がしいのが嫌いなのでこのように苛々するのは当然と言えば当然なのだが、ではなぜ保健医などになったのか。それはひとえに、血を、人が苦しむ様を日常的に視ることができるからで。つまり人をいたぶり、血を見て気が昂るという性癖は前世から全くもって変わっていないらしい。

(そういえば今日から新学期でしたね、)

成る程だから騒がしいのかと先の疑問も自己完結し、ならば生徒と顔を合わせる前にと保健室へ歩を進めた。明智光秀というのはいかんせん他人と馴れ合う事を嫌い、それこそ可能ならば想い人以外とは口もききたくないなどと考えているような男なのだ。だから、保健室のベッドに横たわっている生徒に自ら声をかけるなんて行動には自分が一番驚いているのだ。
「いけませんね…私の許可なくしてベッドを使うなんて」

起きなさい、


自分の言葉に既視感を覚えつつその生徒に声をかける。だが反応はない。何故だか胸がざわざわして、思わず顔までかけてある布団に手をかけ、驚愕する。


「…あなたは、」


ベッドに横たわっていたのは彼、左京だった。にわかに信じられないが、彼に違いない。藍に近い髪色も、異国人のように筋の通った高い鼻も、薄い唇も、今は見えないが琥珀の瞳も同じであろう。
何もかもが、彼と同じだった。もはや他人の空似では片付けられない程に、左京と目の前の生徒は酷似している。

衝動のままに口付ける。愛しい人は、己を覚えているだろうか。否、そのようなことはどうでも良いのだ。もし忘れていたとしても、思い出させればいいだけの話。

だけれど、心は、覚えていてほしいと願う

「……んっ………」
「やっと起きましたか、左京」
「、どうして…名前を?」
「さて、どうしてでしょう…」
「…初めまして、ですよね?」
「この世では、そうかもしれませんねぇ」
「…で、どうして病人の上に乗っておられるので?」
「それはあなたを悦ばせたいからですよ」
「よろこば…って先生が言うと何だか卑猥です」
「おや、そうですか?」
「………。」
「交わりましょう、昔のように…熱く、激しく」
「いや、初対面ですよねっていうか脱がせないでくれますか」
「それは無理なお願いです」
「いやほんと、きついんですってば…」
「…ならばその熱、私にうつして下さい」
「えええ…わけわかんないよこの人」
「さあ、気が済むまで犯して下さい」
「いやあの…」
「貴方が、欲しいです」
「………一回だけ、ですよ」

今はただ、あなたと。





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