「ばか言うなよ、愛なんてエゴだろ?」
「…それがたとえ兄弟でも?」
あんな顔をさせるために、言ったんじゃないのに。
たとえエゴだとしても、
きっかけは安っぽいドラマ。ある男が恋人に、永遠の愛を誓うシーンだった。
「ありがとう…、うれしいわ…」
女はそう泣いて言ったけれど、ムッちゃんは冷めた顔をしていたから。
「ムッちゃんはさぁ、あると思う?」
好奇心だけ。それだけ。訊いてみた、だけ。だから、
(傷つかなくても、)
「はぁ〜?まーだそんなガキみたいなこと言ってんのかよ、あるわけないだろ!」
(いいのに)
知ってた。傷つくこと。ムッちゃんが昔、恋人に、結婚を前提につきあっていた恋人に、すきな人ができたの、とふられたこと。ぜんぶ、知ってたのに、わかってたのに、ムッちゃんを、傷ついた!と責めたくて責めたくてしかたがない。
「……おれはずっとムッちゃんのことすきだよ」
でも、おれは責めるかわりにもっと残酷な言葉を吐いた。
「忘れてた?おれがムッちゃんにすきって言ったこと。ねぇ、」
ムッちゃんは黙った。いつもこうだ。状況が悪くなるとムッちゃんは貝になる。
(ひどい男だ…)
でも、すき。永遠の愛だと声高に叫べるほど。