「おれ、緑間っちのこと、すきかもしれないッス」

レモンティーを吹き出す。話がある、と珍しくなんの飾りもない文面で呼び出された、深夜近くのファストフード店でのことだった。

「……なにを言っているのだよ」
「さぁ…、なにを言っているんスかねぇ…」

口元の水滴を拭くおれ。ポテトフライの油と塩を口の端につけている黄瀬。

「でも、やっぱり、すきなんスよねぇ…」

……瞳が熱で潤んでいたらよかったのに。

「口元が汚れているのだよ」

紙ナフキンを黄瀬にわたそうとする。しかし、黄瀬は微動だにせずに、

「拭いてよ」

などと戯言を吐く。おれは黄瀬のトレイにそれをはらりと落とした。白い動きを目で追いながら、

「おれは黒子の代わりか?それとも、青峰の代わりか?」

奴の乾いた瞳がゆれる。無意識だったのか?と訊きたかったが、やめた。

「おれが、やさしいのは、黄瀬、おまえが、…哀れだからなのだよ。雨に濡れた子犬に、同情するようなものだ。おまえの、」

望んでいるような感情ではないし、おれも…、そんな扱いを受容できるほど、器が大きいわけでもない。

「……ッ、そんなこと、」

なぁ、黄瀬、おれだって、おまえのすきなところ、ひとつやふたつくらいある。でも、こんな…、屈辱的な扱いをされても喜べるくらい、すきではない。それだけなのだよ。

「黄瀬、おまえは、それくらい、あの二人のことが、すきだったのかもしれないが、」

もういい。と黄瀬がにぶく言う。…ここで、口を閉ざしてやるくらいには、こいつのことがすきなのかもしれないな、と思った。

「……忘れてくれる?」
「ああ、先に店も出てやる」

一人にしてやる。さみしくさせてやる。つらくさせてやる。溜息もつかせてやる。

「ははっ、やっぱり、緑間っちは、やさしいッスね…、」

それくらい、おまえが、すきだということだ。と口の中でころがして、捨てた。

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