「ちぃたぁ!」
ねぇねぇ、聞いてよ!あたし、すんごくいいこと思いついちゃった!
「あんたも水槽の中に入ればいいのよ!」
ねっ、そしたら、きっと、もっと楽しいと思うの!どう?すてきじゃない?すてきよね?
「むりだし」
ぐしゃっ!あたしのいい気分はちぃたぁの一言でだいなしになった。
「……なんでよ」
「なんでって…、泳げないし、溺れるし」
…そうだった。ちぃたぁは陸の動物で、あたしは海の動物。ちぃたぁは走れて、あたしは走れない。あたしは泳げて、ちぃたぁは泳げない。
生きてる世界がちがうんだった。
「まっ、それはしかたないことだし!あきらめろって!」
…おばか。あきらめきれないのよ。一回でも夢みちゃったら、もう、しかたないからって、あきらめるなんて、できないのよ。
「さーて、最後にもうひとレースしようぜ!」
ふん。あんたは気づいてないでしょうね。水槽の水にまぎれて、あたしが泣いてるってことに。
「…負けないかんね!」
ばかばかばか。なんでこんなに悲しいのよぅ。