「……おまえ、こわくねぇの?」

オスにのしかかられて、こわくねぇの?

「こわくないよ」

ふん、そうかよ。メスはメスらしく、きゃあとか悲鳴をあげたらすぐに、やめようかと思ってたのに。おまえのせいだぞ。もう、俺は、知らねぇからな。

鎖骨を噛んだ。首すじを舐めた。口を…、

「……やめた」

……ばかやろう。こわくないとか、嘘じゃねぇか。俺がおまえに触るだけで、びくびくしてんじゃねぇか。俺はなぁ、おまえの目が、俺をおびえて見るのが!

「えっ、大丈夫だよ、いいよ、ほら、」

いやだ、いやなんだよ!だから、やめる。

「うるせぇな、やめたって言ってんだろ」

だから、だから、俺が俺をがまんできてるうちに、早くどこかに行ってくれ。

「シシドく、」
「うるせぇ!早く行かねぇと、殴るぞ!」

じゃないと、俺はまたおまえを泣かすことになりそうだ。それも、いやだ。すごく。

「……ッ、」

俺は、おまえにケーベツされるのも、おまえにおびえた目で見られるのも、いやだけど。でも、それよりも、

おまえが泣くのが一番つらい。

「ちくしょう、いやならいやって、はじめから言えよ、ばかやろう。……どうすんだよ、これ」

はぁ、とため息をついて、寝ころがる。こうなったら、寝て忘れてやる。おまえのおびえた顔なんか。おまえにきらわれたかもしれない夜なんか。もう知らねぇ。

明日は、いつもどおりに叫んでやるからな。ちくしょう。

「おい、メス!早くメシもってこいよ!」

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