「……自分は高校生のとき、16歳のとき、なにをしていたんだっけ」

ふとそう思ったので、高校生のときの記憶を探ってみたが、まるで靄がかかったように、ぼんやりとしか思い出せなかった。

(まぁ、彼女のように必死で生きていなかったことだけは覚えてはいるが)

勉強で困った覚えはなかった。俺は勉強ができる奴だったのだろう。彼女のように、追試だ、赤点だ、などと騒いだことはなかった。だが、成績を保つために必死で勉強した覚えもなかった。成績が伸びて喜んだ覚えもなかった。俺はとくに勉強をしなくても、まあまあ成績がいい奴だったらしい。だから、勉強をした覚えがないのだろう。…俺は勉強もしないで、毎日をどうしていたのだろうか。

…ああ、そうだ。思い出した。俺は高校生のとき、とてつもなく暇だったんだ。暇で暇で死んでしまいそうだった。暇だから暇を潰すために外に出た。さまざまな人間に出会い、スリルの味わい方を学んだ。

そうだ、そうだ、そうだ。思い出した。俺は暇だった。だから、興奮を求めて、求めて、求めて、……動物を殺していたんだ。

最初は小さなものから、じょじょに大きくなっていって…。そうだ、最終的に、殺す対象は、鯨になっていた。

鯨。海で一番、いや、世界で一番、大きな動物。それを殺したら、どんなに、どんなに、興奮するだろう。想像するだけでわくわくした。金はあった。金はあった、だから、想像が現実になって、俺は鯨を殺して、殺して、殺して、

「……俺は鯨になった」

プルルルルルルルルルルルルル、

「はい、もしも、」
「蒼井華か?」
「あっ、えっ、イサナさん?ですよね?」
「蒼井華だな?」
「は、はい、蒼井です。イサナさん、どうかしたんですか?なんか焦ってます?」
「おい、蒼井華!」
「は、はい!」

…暇なんてなくなるぐらい、勉強しろよ!

プツ、ツー、ツー、ツー。

「なっ、は、えっ?イ、イサナさん?イサナさーん?もしもーし!」

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