青くて、青くて、青い空に煙草の煙をふうと吐く。ゆらゆらと昇る煙はすぐに空に溶けて消えてしまう。でも、俺はまた煙を吐く。吐く。吐く。空が青い。太陽はさんさんと輝いている。ああ、本当に、いやな天気だ。

「ちっ、」

口の中がスースーしやがる。だから、メンソールはきらいなんだ。煙草は苦くなくてはいけない。じゃないと、身体に悪いことを忘れてしまう。メンソールなんて爽やかな味だと、まるで身体にいいことをしているみたいだ。それに、煙草はすっきりしたいときに吸うんじゃない。さみしいときに、さみしさに浸るために吸うんだ。それなのに、すっきりしてどうするんだよ。まったく、おまえは煙草の美学がわかってないなぁ。ばかばかばーか。

「……遅いな」

俺が煙を吐くのにも飽きてしまったというのに、あいつはまだ来ない。…あたりまえか、まだ昼もんな。あいつはまだ学校だ。授業か、昼飯か、掃除か、…なんだっていい。なんでもいい。早く来い。早く来てくれ。暇すぎて死んでしまいそうだ。今日は海に行くって約束したじゃないか。おまえは、楽しみにしてる、すぐに来る、って言ったじゃないか。なぁ。…まだ昼だ。あいつは学校だ。だけど、なんだっていいから、早く来いよ。

「……くそっ、」

会えたら、おまえが買ってきた煙草について文句を言ってやるよ。俺はメンソールはきらいだっておまえの頭に叩きこんでやる。いつもの銘柄の、あの苦い煙草を買いに行かせてやる。そして、それを海で吸うんだ。俺はおまえの顔に苦ーい煙を吐いてやる。ばかめ。俺のきらいなメンソールを買ってきた罰だ。ざまあみろ。

あーッ!ちくしょう!暇だ!暇だ!暇だ!

暇だし、来ないし、メンソールだし、ちくしょう、いらいらする。くそっ、腹も減ってきやがった。空は青いし、暑いし、いやな天気だ。いやな天気だ、いらいらする。

「早く来い、早く来い、早く来い…ッ!」

煙草に火をつけようとして、やめた。すっきりしたいから吸うなんて、煙草の美学に反する。ああ、俺がそんな理由で煙草を吸おうとするだなんて!ちくしょう、こんな俺になったのも、ぜんぶあいつのせいだ。いつもの煙草がないのも、ぜんぶまちがえてメンソールを買ってきたあいつのせいだ。早く来い。殴ってやるから。だから、早く来いったら!

「失礼します、館長、蒼井華が来ました」

……ちくしょう、遅いんだよ、蒼井華!

「シャチ!早く館長室につれてこい!」

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