痛い辛い痛い どこがというと、下腹部、あと腰。
女なら避けては通れない、1ヶ月に一度訪れる魔の7日間。
毎月やってくるのに未だに慣れない、大嫌いな生理。ニキビができやすくなったり食欲が増したりイライラしたり、副作用もたくさん。わたしは生理痛が酷い方なようで、特に3日目までは生きた心地がしない。お腹は痛いし腰は痛いし頭まで痛くなって。辛い、とにかく辛い。わたしは今絶賛生理2日目で、船の自室の布団の中で生死の境をさまよっている。
「ああ、もう、辛い…」
一人寂しい部屋で呟く。あああだめだ、痛い。なんで、なんで女だけ、毎月毎月こんなに辛い思いをしなきゃならないんだ。くそっ、男に生まれたかった…。男に生まれていたら、わたしももっと戦えるのに。わたしだって剣の心得はあるが、それ以前に男女の壁が立ちはだかる。それは攘夷戦争で痛感した。
「男に、生まれたかった…」
天井に向かって呟いても、その声は願いを叶えてくれるわけではない。目頭が熱くなって、痛み熱を持つ腰と重なって、わたしは布団を剥いだ。
すっと部屋の襖が開いた。身体をくねらせてそこを見ると、小さな盆を持った晋助がいた。
「晋助、」
「具合はどうだ」
「非常によろしくない、辛い」
「そうか」
盆には急須と湯のみと白い小袋、そして形よく切り分けられたりんごが乗っていた。
「りんご…」
「厨房のやつらが食えってよ」
「そう」
りんごはわたしが大好きな果物。今みたいに寝込んでいるとき、誰かしらがこうやって綺麗に切り分けられたりんごを持ってきてくれる。晋助がもってくるにはあまりに不似合いなうさぎさんのりんご。
「美味しい」
「それ食ったら薬飲めよ」
「はあい」
「布団はちゃんとかぶれ。身体冷やすな」
「だって暑い」
「だってじゃねェ。ほら」
「ん」
シャリシャリと小気味いい音を立ててりんごを食す。薬もゴクリと飲み込めば、先ほどより少しだけ身体が楽になった。
「晋助、今日のお仕事は?」
「終わった」
「じゃあ、添い寝して」
「クク、しょうがねェな」
「ありがとう」
細くて、でも逞しい晋助の腕に包まれて、わたしは女なのだと自覚する。このひとの愛を受けられるのは、この世でわたしだけでいい。この痛みも、わたしが女として晋助の傍にあれるのなら、甘んじて受けましょう。やっぱりわたしは、女でよかった。
目を閉じて抱きしめて、腰を優しく撫でる仕草に、またわたしは惹かれていく。
曖昧セクシュアリティ
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