現在、37度8分。微熱だ。 扁桃腺は腫れ、頭痛に苛まれている。どこで菌をもらってきたのか、身に覚えがない。普段の平熱は高い方なのでまだ身体も動くのだが、あまり無理をすると悪化するのは目に見えている。学校には申し訳ないが、お休みをもらおう。生徒に移してしまってはいけないし。
幸い先日の学力考査の採点はすべて済ませてあるし、特別期限の迫った仕事もない。今日は休息に専念しよう。冷蔵庫にあったフルーツゼリーを食べ、置き薬の中にある風邪薬を飲む。平日の午前9時。普段はとっくに家を出ている時間。なんだか変な気分だ。学校に電話を入れたし、もう一眠りするか。
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身体の芯が熱くなる感じ。ある種の快感にも似た、でもあの行為より嫌悪感に溢れた感覚。
「んっ…、はぁ、これ朝より悪くなってないか…?」
「そうだなぁ」
「た、たたた高杉先生じゃないですか…。何故ここに…?」
「何故? 苗字先生が体調を崩されたって聞いてねぇ。看病して差し上げようと」
「やだその口調気持ち悪い」
「あぁ? テメェ気持ち悪いって、」
「で、今何時?」
「16時」
「そう…」
随分長い時間眠っていたらしい。身体は汗で湿っていて、朝より身体が重たい。
「朝には熱あったんだろ? なんで病院行かねえんだ馬鹿」
「市販の風邪薬でなんとかなると思ったから」
「で、結局このザマか」
「うるさい」
私立高校の保険医のくせに、ホストみたいな格好しやがってコノヤロー。とは言っても、流石は保険医と言うべきか。パパッと診察して保冷剤で身体の各部を冷やしてくれた。
「ほら水」
「ん、ありがと」
「ああ」
ベッドに腰掛け、温かい蒸しタオルでわたしの額の汗を拭ってくれる晋助。いつもは意地悪なくせにこういうときはとことん優しいから、わたしも甘えてしまう。
「ね、晋助」
「なんだ?」
「眠るまででいいから、手握ってて…?」
「あぁ、わかった」
「ありがと」
「ほら、おやすみ」
意識の向こうで髪を撫でられているのを感じた。心地よさが発熱の苦しさを拭ってくれた。長いつきあいだけど、改めてこの人を好きでよかったなと思った。
「名前、名前」
「ん、しんすけ…?」
「起きられるか? 薬飲め」
「うん、今何時?」
「夜の8時」
「そう。帰ってもよかったのに…」
「帰って欲しかったのか?」
「そういうわけじゃなくて、」
「ほら、粥。食べられるか?」
「うん」
「それ食って薬飲んで、今度は添い寝してやるよ」
「えっ、添い寝は、」
「早くよくなれよ」
「んんっ、」
わたしの言葉を飲み込むようにキスをして満足そうな顔の晋助。なんだか言いくるめられた感が否めないが、いつものことだ。そんなところも含めて好き、なんて言ってやらないけどね。
治癒力
絶賛スランプなう/(^o^)\ リハビリリハビリ…
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