ヒロイモノ___
まぁ、結果的には夢ではなかった。車掌さんの英語のような発音で最寄り駅がアナウンスされ覚醒した私の足元には書類が落ちていた。それだけの事。踏まないように、と拾ったはいいがユメウツツな私が見たのは真紅の髪の後ろ姿だけ。見たことがあるような気もするような、しないような。駅員さんに渡そうとも思ったが、すでに勤務時間は終わっているらしい。ついてない。仕方がないから明日届けようと鞄に例の書類を滑り込ませた。
あぁ、明日でテストはラスト、しかも楽な教科ばかりだ。最終日気合いいれていこう!
自分で自分を奮い立たせた刹那、コートのポケットが震える。バイブレータの長さ的にメールを受信したのだろう。誰からかはわかりきっている。
カパッっという小気味のいい音と共に私はケータイを開いた。
『今日の教科はよさそうか?』
送り主なんて見なくても分かる、あのお坊ちゃんは今頃余裕でピアノでも弾いているのだろう。合間を縫ってこうやってメールしてきたって所か。
「酷すぎて、泣けてくるよ、と」
返信しながらも私の頭は早く家に帰ってお風呂に入ってご飯食べてベッドにダイブするシュミレーションを行っている。ああ早く暖かい我が家に帰りたい。
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