夕食も終えて、私はリビングにあるわりと大きめのテレビをつける。最近、『シリーズ最新作!!!』と巷で噂になって全国的大反響を呼んでいる洋画シリーズのひとつ前作が今日地上波初登場らしい。これは是非とも録画しなくては。
「ただいま」
ソファーに座る私の視界に赤が映る。ぴょこぴょこした横髪は濡れていくらかしっとりとしている。風呂上がりのようだ。
「なに見てんの?」
「新しく映画やるじゃん、それの前作がテレビでやるんだって」
「ふぅん」
あれ、どうしたんだ。いつもなら目を輝かせて喜ぶはずなのに何故か興味なさげなヒロト。まぁそれでも自分は見たいわけで、私の視線はテレビの画面に釘付けだ。
つまらなさそうにヒロトは小さく唸り、私の手を少しキツく握った。普段ならそんな事をしない彼だけに、驚いて横を見るとそっと触れるだけのキスをされた。
「俺にも、かまって」
離れ際に囁かれ、私の脳天から足の先まで一息に電流が流れる。心臓に悪い。当の本人は若干の熱を孕んだ翠の瞳を向けてくるだけで、確信犯なのか否かもわからない。そういえば今日一日はヒロトにやられっぱなしだな、と思い私はその翠を見つめ返した。やられっぱなしは性にあわない。
わずか数センチしかない私たちの距離を0まで縮めて私は言う。テレビなんて録画してあるのだし、この際どうでもいい。
「ヒロトなんて、大好きだ」
Compromise おわり
キレイな顔を、自身の髪に劣らないほどに真っ赤にさせた彼が私を抱き上げて寝室へ向かう間も私は、恥ずかしさを上回る幸せさを噛み締めていた。
←