「ただいまー」


靴を脱ぎ捨てて家にあがると後ろでヒロトが私の分まで丁寧に揃えてる姿が目に入った。女子力低くてすみませんね。

リビングにあるお気に入りの白くて大きなソファーにどっかり座って寛いでいると、両手に麦茶を持ったヒロトが隣にふわりと座った。


「やっぱり名前ちゃんの家は落ち着くね」

「誰もいないからね」

「違うよ、俺が初めて訪れた地球上の民家だからだよ」

「なにそれ初耳」

「あんなに急にやって来て他の誰かにも助けられていたらその方がおかしいじゃないか」


それもそうか、と少しだけ納得。

そう、奴は本当にいきなりやって来たのだ。荒れ狂う嵐の中、私が何気なく窓の外を見たら赤い髪をして変な服を着た人、つまりヒロトが血だらけで倒れていた。私は慌てて奴を家に運び込み、髪の毛を乾かしてあげたのだが、数時間後に起きたヒロトが言った言葉は今でも忘れられない。


「地球人が拾ってくれる確率が一番高いシチュエーションで来たのに?」

「でも名前ちゃん以外に拾われてたら死んだふりでもするつもりだったよ」

「よく言うよ」

「嘘じゃないよ、宇宙から名前ちゃんを見て一目惚れしたんだ」

「……それも初耳」


なんとも恥ずかしいことをサラリと言うやつだ。まったく。


「名前ちゃん」

くたり、と私の方にヒロトがもたれ掛かってきた。おいそういうのは彼女の役割じゃないのか。そう思いながら彼の方を見ると翠色の瞳と視線が交わった。キレイだななんて思っているうちにヒロトの端整な顔はどんどん近づいてくる。


「好きだよ、名前ちゃん」

「、私も」


あぁ恥ずかしい。2人だけの静かな家に小さくリップ音が響いた。









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