「名前ちゃんって、木星人っぽいとこあるよね」


その一言に私は口に運ぼうとしていたフォークに刺さったままの角切りリンゴを落としてしまった。金属製のそれは、これでもかというほど喧しい音をたてて床に転がっている。


しかし、当の本人は周りのみんなが諸々の"驚き"と"戸惑い"のリアクションをおこしている最中、再び何事もなかったように口を開いて話し出そうとしている。我に返った私は、フォークからすっぽぬけたリンゴを拾うのもわすれてただ慌てて奴の口をふさいだ。


「木星人ってさ、雰囲気がすこし柔らか…むぐっ」


「ははは、基山くん黙ろう」



周りのみんなには"ちょっと電波はいってる奴だから"と苦しい言い訳をしてみる。ああもう、お願いだから変なこと口走るな。



「名前ちゃ…ん、死…ぬ…」


「あ、ごめん」


私が口を塞いでいたせいで窒息しかけていた彼は、私が離すと苦しそうに咳き込んだ。うーん、こういうのは人間っぽいのになぁ。


「ところでさ、なんで学校来た?」


「ん?あぁ、それはね、名前ちゃんの通うガッコウと呼ばれるものを見てみたかったんだ」


だめだ、これ以上ここに奴を置いておくとボロしか出ない。ここは早退してでも学校を離れなくちゃまずい。


隣で唖然といった表情をしている友人の一人に声をかけた。


「私、帰るね。なんか体調悪い」


「え、大丈夫?」


「たぶん大丈夫、だから先生に言っといてくれない?」


「うん分かった」


無事にサボりの手続きを済ませた私は反対の隣に座っている彼に声をかけた。


「私帰るね」


「え、どうしたの!?具合でも悪いの?俺も帰る!」



お前を帰すためだよこんちくしょう、と思ったが、予想以上に彼が心配してくれたのが少し嬉しくて許すことにした。なんせコイツには悪意など少しもないんだから。文化が違うだけで。


「帰ろ、ヒロト」


なんだかんだ、私は目の前で心配そうな顔をしている宇宙人が好きなんだなぁ。










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