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名前が来たのは予想外だった。そして階段から落ちたのはもっと予想外だった。しかし、2度ある事は3度ある、と古くからの諺にあるように、またそれをも上回る予想外の出来事が起こった。


「鬼道に姉貴いるなんて初耳だぜ」

「妹かと思ったら姉貴なんだな」

「でも鬼道センパイのお姉さんめちゃくちゃ可愛いじゃないですかー」

「あぁ、たしかに。笑うと鬼道に少し似てるよな」

「あ、それ俺も思った」



部屋へ皆を連れていけば話題は専ら先ほど遭遇した名前の事だった。だが正直これは想定内だ。今まで名前の事を話したことは1度もないし、俺がいうのもアレだが名前は容姿だけは可愛い。(まぁつまりは頭が残念なのだが)だから少なからず話題にあがることにはなると思ってはいた。というより、こうなるから隠したかったのだが。


「………」


で、問題の更なる予想外の出来事とは、これだ。佐久間がおとなしい。いや、おとなしすぎる。(一応言っておくが春奈の事ではない)いつもなら少しでも俺に関する話題になると煩いぐらいに食いついてくるのに、一体どうしたんだ。俺の彼女疑惑が浮上した時の勢いはどうした。顔を窺おうにも若干うつむいていてよく見えない。心配だ。

そんな事を思っていると成神が佐久間の様子に気づいたようだ。相変わらず鋭い奴だな。


「佐久間センパイ、どうかしましたー?」


そして俺は本日最大の予想外に出会う事にある。誰だ"2度ある事は3度ある"なんて言ったのは。4度あるなんて聞いてないぞ。


「え?や、別に…」


顔を上げた佐久間にその場の空気が凍った。なぜなら。



佐久間は恋する乙女の顔をしていた。









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