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「おじゃましまーす」

「こら、ちゃんと靴揃えて入れ佐久間」

「わかってるっつーの」


家の玄関がいつになく騒がしくなったので俺は慌てて下に降りた。奴らを招いていたのを忘れていたわけではない。絶対に。ぞろぞろと鬼道家の廊下を歩く帝国サッカー部員たちは始終源田に注意されっぱなしだ。しかしながら間が悪い。というのも全て自分の計算ミスから来るものだが。仲のいいメンバーで集まっていつもなら楽しめるはずなのに、今日の俺の頭はどうやってその生じた狂いを修正するのかでいっぱいだった。あぁどうしよう。


「源田先パイまじオカンー」

「ほんとすまないな、源田」

「いや、鬼道に比べたらなんでもない」


今奴は3Fの第5リビングにいるはずだ。そして俺の部屋は2F。よし、奴の普段使わない方の螺旋階段で自室まで連れていけば遭遇はしないはず。これでいこう。


「鬼道先パーイ、玄関に置いてあったブーツ、誰のですかー?」

ふいにニヤニヤと笑う成神に話題を振られ、戸惑う。くそ、コイツの観察力の鋭さを忘れてた。成神の隣で異常に動揺した佐久間が鬼の形相で俺に訊ねてくる。


「きききき鬼道さん…!そんな、彼女なんて、オレ…!」

「心配するな、彼女ではない」

そう俺が告げると安堵する佐久間に、落胆する成神、変わらない源田。辺見や咲山に至っては2人で違う会話をしていて俺の彼女騒動には気づいてないようだ。話の原点だった成神の興味が薄れたから話はそのまま流れた。正直、これ以上踏み込んでこられたら逃げ切れる自信がなかったので助かった。そんな事を思いながら螺旋階段を登っていると奥の方から見慣れた白いスカートがひらり。あれは、まさか。いや、そんなの見間違えに決まってる。心配のし過ぎで幻覚が見えたに違いな…


「あれ?有人の友達?」


目の前には俺の恐れていた事態が。俺の後ろで動揺するみんな。あぁ、最悪だ。

……まったく、全てが水の泡のようだな、名前。









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