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名前の家に近づくにつれ、自分が元の姿に戻った事を実感する。回りの景色がこんなに大きく見えるなんて俺はどれほど小さかったんだろう。

思えば、事の始まりは久しぶりに送られてきた総帥からの手紙に同封されていたバングルだ。あれを特に考えもせずにつけていた俺は突如現れた天使のコスプレをした奴に喧嘩を吹っ掛けられて、それを割と短気な俺が買わないはずがなく…。気付いた時にはあんな姿だったというわけだ。天使のコスプレしたアイツ曰く、『お前が女みたいな恰好をしているのが悪い』だそうで、俺を一発で男と見抜ける奴と暮らしていれば治る呪いを俺はかけられた。なんだそのピンポイントな呪いは。天使もどきかと思っていたら、どうやらホンモノだったらしい。仕方がないので俺を男だと一発で見抜ける奴を探した。だが悲しいことに、俺が今まで出会った中で初対面で見抜いた奴はアイツしかいない。鬼道さんの妹…じゃなくて姉貴、名前だ。そうして俺は名前の家に入り浸るようになった。もともと心のどこかにひっかかっていた名前の事を好きになるのはさして時間はかからなかった。そして元の姿に戻った俺は今日ついに、名前に会いに行く。道の途中、予約しておいた彼女の好物である限定品モンブランを買い、俺は家のチャ
イムを押した。ドアの内側から聞こえてくるピーンポーンという間の抜けた音と相反して、俺の心臓は緊迫した異様な音をたてていた。


中からバタバタと音がしてこちらへ向かってくる。たぶん彼女は俺がいるなどと露ほども思ってはいないだろう。名前らしいな、などと笑う余裕が少し生まれた。


あと、3秒、2、1









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