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「オイ、できたのかよ?」
「…あぁ」
お気に入りのカッターシャツに、ネクタイ、縦縞の入った上下スーツ、そしてちょっと奮発して買ったローファーに足をいれる。いわゆる正装だ。手には大きな色とりどりの花束。
「…正装に花束かよ」
「気合い入りすぎ、か?」
「ま、いいんじゃねぇの」
「不動、」
「言っとくけどな、名前泣かしたりしたらただじゃおかねぇぞ」
「あぁ」
「ったく、この俺様が大人しく引いてやってんだ、しくじんじゃねぇよ」
「不動、ありがとう」
「勘違いすんじゃねぇ。俺は名前に幸せになってほしいだけだ」
「…あぁ」
「ったく緊張しすぎだっての。早くいかねぇと花枯れんぞ」
不動とはなんだかんだあったが、こうして今、自分の好きな奴の幸せを願って俺を送り出してくれる。もしこれが俺だったらできないと思うと思ってしまう、やはり不動は大人なのかもしれない。
「…行ってくる」
「無様な姿見せてくんなよ、佐久間ちゃん」
「あぁ」
俺は重い重い1歩を踏み出した。
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