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ピーンポーン



「あ、はーい!」


ガチャ


「いらっしゃい、有人」

「いい匂いだな、パスタか?」

「急いで作ったんだからぁー!っていうかね、有人!聞いてほしいことがたくさんあるの!」

「わかった、とりあえず落ち着け」


即席で作ったパスタを出しながら、テーブルへ有人を通す。興奮した私を焦らすかのようにゆっくりと席につく有人。


「あのさ、私猫飼ってたの知ってる?」

「あぁ、源田に聞いた」

「その猫の名前、ジロウっていうんだけどさ」

「名前がつけたのか?」

「自分で教えてくれたんだよ」

「…」

「ほんとだって!ケータイでひらがなでジロウって!」

「まぁいい、そういう事にしてやる。で、その猫はどこにいるんだ?見当たらないが」

「それがね、消えちゃったの!」

「家出か。よほど食生活がひどかったんだろう」

「そんなことないし!めっちゃなついてたし!悩み聞いてくれたし!」


軽口を叩きながらも、私が作ったパスタを美味しいと誉めてくれる辺りはできた弟だ。口は悪いけど。あれかな、ツンデレ?


「猫に悩みを相談するとは…。その猫も可哀想だな、そろそろ日本語を喋り出すんじゃないか?」

「もう書き出しちゃったよ!しかも漢字で!」

「……頭大丈夫か?」


失礼な事ばかり言う有人の前にジロウからの手紙をつきだす。ほら、驚いてるじゃない。


「ね?」

「名前、これは…」


プルルル…


有人が何かを言いかけたその時、家の電話が鳴り響いた。ケータイじゃないから大音量のアヴリルではなかったが、しんと静まった空間に響き渡るには十分な大きさだった。


「もしもし?」

『おい、名前か?』

「明王ちゃん!?どうしたの?電話なんて珍しい…」


「不動だと?」

『ん?鬼道ちゃんもいんのか?』

「えっとー、明王ちゃんと話してて、有人が側にいる」

『ちょうどいいじゃねぇか、名前、今晩空けとけよ。んで鬼道ちゃんに代われ』

「え?今晩?いいけど…。じゃ有人に代わるね」


はい、と有人に受話器を渡す。

「俺か?」

「うん、明王ちゃんが」



そのあとしばらくの間、明王ちゃんと有人は話していた。会話の内容はさっぱり分からなかったが、とりあえず今晩空けておけばいいらしい。うーん、明王ちゃん何考えてるんだろう。

ちょっと冷め気味のパスタを頬張りながら今日の夜の出来事を想像した。









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