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「にゃああ」
「はいはいわかったから。えっとー…もしもし?」
ジロウは電話がなると急に騒ぎ出す癖がある。最近気付いた癖だが、基本的に頭がよくて割と行儀のいいジロウの珍しい癖だった。今もまたジロウを宥めつつ電話に出る。あれ、有人からだ。
「有人どうしたのー?」
「…最初は普通、もしもしじゃないのか」
「いーの。で、どした?」
「明日家に行ってもいいか?」
「明日?いいよ全然!ご馳走用意しておくね!」
「ほう、楽しみにしておく。ところで…」
急に有人の声が鈍る。いつもハキハキと話すのに一体どうしたんだ。
「前に家に来たときに会った、佐久間の事を覚えているか?」
「佐久間くん?覚えてるよ」
あ、ジロウがソファーから落ちた。大丈夫かな。
「それがな、佐久間が行方不明なんだ」
「………えええ!?行方不明!?」
あれ、ジロウが落ちたまま動かない。やばいかも。
「ここ数日間連絡が全くとれなくてな、家に行ってみたんだが帰ってないらしいんだ。だから見かけたら連絡たのむ」
「う、うん…」
「それだけだ。では切るぞ」
「ば、いばい」
ガチャリと受話器を置く。佐久間くんがいなくなった、なんて。
「にゃおん」
やっと復活したジロウが座っている私の膝に乗ってきた。頭を撫でながらジロウに話しかける。
「佐久間くん、大丈夫かな…」
「…」
「ねぇ、ジロウ。
私ね、佐久間くんに恋してたみたい」
ジロウはピクリとも動かなかった。
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