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ジロウが鍵を届けてくれたからさすがに明王ちゃんに悪いので家に帰ることにした。
「明王ちゃんありがと!」
「もう来んなよ」
「絶対来る!ジロウも一緒に!」
「おい、わかってやれ。猫嫌がってんぞ」
「え、ジロウ明王ちゃんのこと好きなの?だめだよ私のだから!」
「ツッコミきれねェ」
そこで私はふと思い出した。
「ねぇ、そういえば明王ちゃんの好きな人って誰なの?」
「あ?ざけんな、さっさと帰りやがれ」
「えー教えてよー」
「つうか気づけよ」
「え?」
明王ちゃんはジロウをちらっと見た後、私に向かってハッキリと言い放った。
「好きな奴以外なんて家入れねぇよ」
「……え、それどうゆ…ちょっ!?」
明王ちゃんは自分の話したいことだけ話してドアを閉めてしまった。ドアを挟んで外側に佇む私とジロウ。しばらく放心していた私だが、考え事の続きは家でしようと思ってジロウを抱き上げた。
「帰ろう、ジロウ」
心なしか、ジロウの元気が無くなった気がした。
(やべぇ、言っちまった)
(明王ちゃんの気持ちなんて知らなかった)
たまには交錯する想いチックに。
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