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明王ちゃんはインターホンを押したお客さんを迎えにいった。こんな夜にわざわざ来るなんて何があったんだろう。明王ちゃん、見た目は不良みたいだけど(中身も不良だが)本当はすっごい優しい。明王ちゃんは、つっぱるくせに寂しがり屋な、俗にいうツンデレだと私は思っている。みんなちゃんと明王ちゃんを見るべきだ、こんなにも可愛いのに。そんな事を思いながらゴロゴロとベッドで転がっていた。
「あ、おい、ちょっと待て!名前捕まえろ!」
「は?」
「にゃあああ」
がしっ、と私のお腹に何かが飛びついてきた。その反動で私はベッドに倒れ、今しがた飛びついてきたものをまじまじと眺める。
「にゃあ」
「ジ、ジロウ…!」
長い銀髪を揺らして私に飛びかかってきたジロウは、私に引っ付いてから離れようとしない。
「ごめんねジロウ!私、鍵なくしちゃって…」
「にゃあ」
あぁ、自分で言っててみっともない。ほんとごめんね、ジロウと明王ちゃん。すると背後でドアが空いた。
「どうやらもう帰れるみたいだぜ」
「え?」
「このクソ猫、ドア開けた途端に俺にコレ渡して逃げやがった」
「ジロウ…!」
なんとジロウは私が無くしたはずの鍵を持ってきてくれたらしい。ほんとに頭がいい猫。
「ジロウ大好き!」
「にゃおん」
私に頬擦りしてくるジロウを、明王ちゃんはじっと見つめている。
「この猫、ジロウっつうの?」
「そう!自分で教えてくれたんだよ!」
「ふーん…」
暫く考えた様子をした後、明王ちゃんは何やらニヤニヤし始めた。
「…そういうことか」
ジロウの耳がピンと立った。
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