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「よーし、猫。ご飯だぞー」

「にゃああ」

急遽家にやってきた割にはよくなつく猫。自分が買ってきたモンブランを食べている間に猫に野菜系を食べさせてみた。動物に関する知識はほぼ皆無だったが、この猫をみる限り野菜は食べれるようだ。でも明日の大学の帰りにはキャットフードか何かを買ってやらないと。野菜だけ生活はいくらなんでも可哀想だ。

むしゃむしゃと野菜に食らいつく猫を見て私はふと思った。

「名前、何にする?」

一緒に暮らすにあたって、いつまでも名前をつけずに"猫"と呼び続けるのはどうかと思う。そこで私は名前の候補を挙げていった。

「タマ」

すると猫はまるで嫌がるかのように私に背を向けてしまった。

「颯太!きみまろ!プリン!アレックス!」


最初の方こそ嫌がる素振りを見せてはいたが、だんだんとめんどくさくなってきたのか、私のケータイで遊びだした。こらこら、私のケータイには彼氏とのラブラブメールがびっしりと入っているのだよ。

「………」

なぜか猫に怪訝な顔をされた。こいつ言葉が分かるだけじゃなくて嘘も見破れるのか。簡単に嘘を見破られた私は、猫からケータイを取り上げた。まったくもう。


「…え、なにこれ」


驚く事に、猫が適当に押したケータイはメール作成画面に変わっていて、本文には「じろう」と打ってあった。嘘だろ。


「……じろう?」

「にゃあ」

こいつ、もしかしたら本当に言葉分かってるのかもしれない。さっきまでの不機嫌はどこへやら、ご機嫌な様子で野菜を食べ始めたジロウに、私はふぅ、とため息をついた。









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