6___
結局僕たちは遅刻してしまい、先生にこ―ってり怒られた。
でも僕の頭の中を支配するのは、先生の中身がすかすかなお説教ではなく。
名前の下駄箱に入っていった1通の手紙の事だった。
急いでいてよく見なかったけれど、白いシンプルな封筒に何回も書き直しの跡が残る宛名を見れば、中身は言わずとも理解できる。
おそらく、ラブレター。
見た目も中身も決して悪くない(むしろ僕に言わせれば可愛すぎる)名前に、淡い想いを抱く人がいても当たり前だし仕方がない事だと思ってはいる。
現に今までだって僕は、名前への告白現場を見たことがあるし、名前に想いを寄せる人の話を聞いたことは数えきれないほど。
いや、正直に言うとすごい細かいことまで正確に覚えているのだけれど、その話はまた今度。
そして僕は毎回それを平気な顔をしながら(でも内心は気が気じゃない)相槌をうち聞いている。
僕だって、この募り積もるこの想いを抱えるだけでなく、彼女に伝えたいとは思っているけど…
でも僕には名前に告白する勇気がないのが実際で、今の関係が近すぎて、壊れた時の事を考えると何もできなくなってしまう。
そんなんじゃいつ名前が離れてもおかしくないぞと頭では解っているのだけれど。
どうか、今回の相手もフラれますように。
不謹慎かもしれないが、それが僕の正直な気持ちだった。