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「ヒロト、遅刻」



「え」




時計を見れば、授業開始15分前。




「ちょっ、名前、走るよ!!」



「え゛―」




今日は少しのんびりしすぎたようだ。

微塵も焦る様子もない名前の手を引き、学校まで走る。




全力で走れば間に合うだろうか。



「名前、」



「このまま走れば3分前に着くよ」



「そっか」





僕は彼女の頭の中で
一体どんな計算が行われたのかなんて分からない。
でも、名前が導き出す数値はいつも寸分の狂いもなく当たる事は知っている。



国語はビリから数えた方が確実に早いというのに
数学や理科は先生でも勝てるかどうか、なんて
彼女の存在は世の中の常識をねじ曲げてる。


一般的に言えば電波とでも言うのだろうか、
名前の頭の中はとにかくぶっ飛んでる。
彼女の発言はみんな理解できないし、彼女も特に望まない。


でも唯一僕は理解できるし、彼女も意志疎通を図ってくる。

彼女にとって、僕は特別。
僕はそれだけで幸せに浸れるんだ。



そんな世界の常識をも軽々とねじ曲げる彼女は
学校が近づくにつれて息が切れてくる僕の隣で
余裕な顔してにっこり笑い
僕の言うのだ。




「消費カロリーは20kcal.」




校門の前で円堂くんが風丸くんに怒られてる声が聞こえた。












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