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「う…そ、」
「嘘なんかじゃない、僕は名前が好きだ。」
「私、のこと、嫌いになっちゃったんじゃないの?」
僕が名前を抱き締めているせいで、肩越しの会話。名前の表情が見えない。
「そんなわけが、」
「だって!私がヒロトと仲直りしたくて一朗太に貰った映画のチケット渡して一緒に行こうと思ったのに…ヒロトは…、ヒロトは…!」
「それは、名前が好きな人がいるって言うからきっぱり諦めようと、風丸くんが好きなんだっておもったから、それで…!」
「私が好きなのはヒロトだもん!ヒロトがずっと好きだったから誰とも付き合ってなかったのに、なのに、ヒロトは…」
そういっているうちに、名前の瞳にはぶわっと涙が溢れてくる。
「ご、ごめんって…!だけど僕は名前のことがずっと好きなんだ、だから泣かないでよ」
「ばか、ばかヒロト!」
「うん、ごめん」
僕にばかと言い続ける名前と、ひたすら謝る僕。そんなやりとりがしばらく続いた。やがて名前の涙がおさまったあたりで僕はグッと彼女を抱き直し、確信のある質問を投げ掛ける。
「…ねぇ、僕の告白の返事ちょうだい?」
「そんなの決まってるでしょ、」
名前の唇が母音アの形に動き、それが音を発する前に僕の唇がそれをふさいだ。
小さなリップ音を立てて離れた瞬間、どちらからともなく呟いた。
"嫉妬してました"