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別に行く宛もなく飛び出てきた僕は、意味もなくいろんな店をブラブラ。この店可愛いな、あれどっかで見たことあるような、あぁそういえば名前が好きだった、もう。結局は無意識に名前の事ばかり考えている。何をしているんだ、僕は。好きな人の幸せさえも願えない、器の小さな奴だったなんて。かっこわるい。
一人で悶々と考えていても自己嫌悪に陥るだけだから、家に帰る事にした。ひたひたと僕の歩く音が道路で響く。
鍵を差し込み、ガチャリ。ん、あれ?閉まっている、おかしい。今確かに鍵を回したのに。不審に思ってもう一度開けると、今度はすんなり開いた。僕、鍵閉め忘れたっけ?
「ただいま」
いつもの癖でドアを開けながら言ってしまい、少しむなしくなる僕。もうここには僕しかいないんだってば。
すると、どこからか泣き声が聞こえてきた。え、ちょっと待ってよ。僕しかいないはずでしょ。不審に思って音の方へと歩いて行くと、もういないはずの元名前の部屋の電気がついていた。名前は今デート中なんだから帰ってくるはずがない。……泥棒?どうしよう。
恐る恐る部屋に近づいてみる僕。ドアに耳をくっつけ中の音を聞いてみれば。
「うっ、んん、ぐすっ…ヒロトぉっ、ぐずっ」
「……名前?」
泣き声がピタリとやんだ。