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「まぁとりあえず、アイスでも食べようぜ。おいしい店があるんだ」
さっきの一朗太の言葉、"奪っちゃえばいいんだよ"がなかなかすんなり頭に入ってくれなくて、脳みそは絶賛稼働中。いつの間にか会計を済ませた一朗太は(払わせてしまった…。申し訳ない。)私の手を引きオシャレなお店の前まで連れていく。
「フレーバーは俺のオススメでいいか?」
「う、ん」
テキパキと動く一朗太にかろうじて着いていきながら、ぼぉっと考え事をする。私、なんかみんなに見られてるなぁ。恥ずかしいなぁ。目の前の綺麗なレンガ通りには、たくさんのカップルが楽しそうにイチャイチャ。青い髪、白い髪、金の髪、赤い髪。あれ、あの人ヒロトに似てるなぁ。髪の毛の色が。ん?よく見たら髪型も、それに顔も。あ、ガラス越しに目があった。
「ヒ、ロト…?」
向こう側のカフェで可愛らしい女の子と座っているそっくりさんは、ヒロト本人だった。その証拠にほら、むこうも驚いてる。
その時、足音が近づいてきた。
「名前、恋のフレーバーだっ……あ」
爽やかに笑っていた一朗太の手には、綺麗な青のアイス。私の視線の先に気づくや否や、一朗太の顔が歪んでいく。
なんで恋は、赤やピンクじゃないの。
気づけば向こう側のカフェにいた、恋色のヒロトはいなくて、いるのは目の前でばつの悪そうにしているアイス色の一朗太だけ。
「名前、行ってこい」
「え?」
「ヒロトのとこ、行ってこいよ」
「だってどこかわかんない…」
「家に行けばいい。送ってやりたいが俺が行くとこじれるからな。大丈夫、自信持て、今のお前は最高に可愛い。」
「……っ、ありがとう、一朗太!」
私は慣れないパンプスに転びそうになりながらもレンガ通りを駆け出した。