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「わぁぁん、一朗、太ぁ…」
「よしよし、辛かったな」
「やだよぉ、ヒロトに嫌われたくないよぉ…」
ひっく、と嗚咽を洩らしながら俺に抱きつく名前。妹みたいに可愛がってきた俺としては不謹慎ながらも頼られて嬉しい。頭をなでてあやしてやれば、やがて彼女はすぅすぅと息をたてて寝入っていた。
「寝たのかよ…」
とりあえず、もう夜遅いから家に泊まらせよう。連絡先は…と。
「基山と住んでるんだっけ…」
これは探しているだろう。なんだかんだ基山は名前が好きなのだから辛く当たったとしても心配しているはずだ。でも俺の可愛い妹、名前を泣かせた罪は重い。
プルルル…
「あ、もしもし基山?俺、風丸だ。名前だけどさ、今日は俺が預かるから。じゃあな」
電話の向こうで焦った声がしたが、構うものか。言いたいことだけ伝えて、そのまま俺はケータイの電源を切った。